幾度のキスより《N.K》4

102.絵 ページ12

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初めて見る、大野先輩の絵。




普通の絵じゃなくて



普通のものに、何か命の宿ったような。




特別なものが宿ったような、そんな絵。





入り口を入ってすぐ正面に見えた大きなキャンバスの絵も



そこからずっと続くスケッチブックから切り取られた落書きのような絵も



切り絵も粘土も。




普段の大野先輩からは想像できないようなものばっかり。





「これ…全部ほんとに大野先輩が…？」



智「疑ってんのかこのやろ(笑)」




すごいすごい、って



それしか言わないあたしを、ずっと「そんな？(笑)」って言いながら見ていてくれた。





軽く、1時間半くらい見ていたと思う。




智「まだ見んの？」



「もう少し…」




そんなやりとりも、何回目だろう。




智「もう17:30っすよおねーさん」



「え！？うそ！！」




後夜祭は18:00から。




さすがに、もう行かなきゃ！って焦ってそこを出た。




階段の踊り場で、ずーっと、繋ぎっぱなしだった手と手が離れる。





空いた手は、ほんのちょっとだけ、寂しかった。





智「じゃ、ラストお仕事しますか」



「ですね(笑)」



智「そんじゃ、俺は先にステージ行くね。」



「あたしも教室に寄ってからすぐ屋上行きます」




帰りは、屋上でね




そう言った先輩の目はどこか切なかったけど




一度、教室に行って、いくら11月とはいえ昨日も照明で散々体力を使ったから、



ブレザーを脱いで自分の机に置いて、資料だけ持って屋上へ急いだ。

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