パリコレ捨ててアイドル目指しました。II (ページ14)

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ﾛｸｼﾞｭｳｻﾝページ14

一気に背中にぞわぞわと悪寒が駆け巡る。

ぶわりと冷や汗が止まらない。

堪らず下を向いてしまった。

こんなにも久しぶりの再会であっても私はまだ勝てないのだ。

血縁関係よりも濃い

主従関係か残っているのだ。

後ろも振り向かずにそのまま呟く。
『お母さん…』

SY「A…帰ろう」

オンニが震えながらも私の手首を掴もうとしたが生憎それは空を切った。

母がカツカツとヒールを鳴らして私の元まで近寄ってオンニの手を払ったのだ。

そのまま私の両肩を掴んで揺らす。

母『今まで何してきたの。

…A』

名前を呼ばれるだけで体がびくりと震えてしまう。

母は私の体を恐怖で支配していることを知らない。

「…はい」

母『貴方黄金比を殺してしまったのね』

この言葉だ。

何度聞いただろう。

母は私が理想のサイズの範囲から1㎜でもずれてしまった時、

何故か悲しそうな顔で私の頬を撫でながら…

母『こんなにも頑張ったけどお母さんの気持ちは届かないのかしら…何が間違っていたか教えて頂戴…』

こういうのだ。

ごめんなさいごめんなさいと謝罪の言葉と共に私の頬を撫でるのだ。

現在進行形で行われているように。

普段は感情を捨てて私に仕事しかさせずに自由に呼吸もさせてくれないような母が

時折私がミスをするとこのような姿になるのだ。

そのギャップが私は怖かった。

どっちも本心で熟す母が。

こんな時だけ母親面をして私から捨てられないように振る舞う母が。

母『わかる。わかるわよ。

貴方にはこんなジメジメした世界なんて似合ってないの。』

嫌な予感がして母の手を肩から退かそうとする。

上手く息が吸えずにひゅうひゅうと喉が苦しそうな音を上げる。

絶えず私はアイドルに向いていないだの文句をつらつらと述べる母の先の視線にある廊下の奥からガチャりと音がした。

止めて、許して、と声を出そうとしても何も出てこない。

息が苦しい。

腹が痛い。

母の視線から逃げるように腹の方を見ると全裸の私。

はらのあたりでなにかがうごく。

ぼこぼことはらをたたく。

ぷつぷつとはらがさけるおと。

むしのはばたくおと。

なにかがしたなめずりするおと。

あしのゆびのさきが

まむらさきにそまっていく

これは

うそだろう

もう治っていたと思っていたの

私の空想だったということか