パリコレ捨ててアイドル目指しました。II (ページ11)

今日:8 hit、昨日:4 hit、合計:30,048 hit

ﾛｸｼﾞｭｳページ11

結局ベッドに潜ったところでテテさんのことが頭の中を染めて二時間程しか眠れなかった。

せめて体は使い物にならなくては本番である数時間後に何もできなくなってしまう。

鈍った体を奮い起こしてランニングへの準備を始めた。

今の私は仕事ではなく【オフ】だ。

よって、PDさんから支給された服以外を身に纏っても良い。

急いで洗顔をして髪を一つに纏める。

いつもトレーニングの時に使っている黒の光沢感のあるランニングタイツの上から両サイドに軽くスリットの入ったショートのランニングパンツを履き、タンクトップの上にジップパーカーを閉めて軽いシューズを履く。

そして飛び出すように部屋から、

ホテルから出た。

外は冬を告げるくらいの肌寒さで体が震えたが、一歩ずつ上に跳ねるように力を入れて走る。

夢中になって走っていたら既に集合時間の１時間半前を過ぎており、慌てて汗を流し支度をしてマネージャーに挨拶してそのまま先に会場に入って最終確認を始めた。

SY「ねぇ、ヨルって前に一度会ったことあったっけ？」

ブラシを順番に丁寧に並べていると隣からオンニが私に声をかける。

突然の言葉に動揺して思わずブラシを落としてしまった。

SY「あっ、落ちちゃった…代用の出しに行こうか！ユナオンニには内緒ね！怒られちゃう笑」

いつものようにからからと笑い声を上げながら予備のブラシの入ったバッグを取りに廊下へ出た。

階段を下る途中の踊り場で先行していたソヨンオンニが私を振り返る。

SY「ねぇ

ヨルって嘘つくの苦しいでしょ？

Aってば

私が気づかないとでも思ってたの？」

ずっと二人三脚だった貴方のこと忘れるわけないんだよ？と私の元へ駆け寄って両手を握った。

SY「そっか…Aが練習生だって防弾の皆も言ってたし…自分の夢見つけたんだね…

アイドルになるのが夢なんだね…？

前のようなマネキン人形じゃないんだよね…？」

沢山沢山心配してくれたオンニ。

音信不通になった後でも連絡をしようと奮闘している噂も耳にした。

裏切った私にもこんな風に優しく良かったねと温かい手で握ってくれる。

手の冷たい人の心は温かいというが、

オンニの手は温かくて心もこんなにも温まる。

「はい。ソヨンオンニ。

私の初めての夢です。

アイドルになって輝きたいんです。

私の意思です、応援して下さいますか？」

お互い何かが切れたかのように涙を流し、きつく強く抱き合った。

こんなに幸せな再開は初だった。