天使にねがいごと(祥生) ページ9
"天使みたい"
人は皆口を揃えて、彼のことをこう言う。
目にかかる前髪がふわふわしている。
笑った顔は綿毛のように柔らかい。
タレ目の綺麗な顔立ち。けれど案外肩幅は広くて頼もしい。
天使みたい、それはわかる。
わかるけど … ！
｢ほんまアホやなあ、目覚ましセットしなかったん｣
『したよ！したけど聞こえなかったんだもん』
｢俺が迎え行かんかったら遅刻確定やったで｣
お寝坊ちゃん、と私の額を小突く祥生。
最初は可愛いなぁと思ってた。
でも、付き合い始めて慣れていくほど見えてくる案外S気質なところ。
"アホ"なんて何回言われてきたことだろう。
バカにされているというより、"愛おしい"を感じてしまう。きっと、彼も本気で私のことをアホだなんて思ってない。
付き合う前もそれからも、デレデレでラブラブというより 友達関係のような距離感。お互いに、この距離感が居心地が良い。
『みんな騙されてるよね、祥生は天使だけど天使じゃない』
｢んはは、どゆこと？｣
『だってアホって平気で言うもん。彼女なんだからもっと優しくしてよ』
｢んー、充分甘やかしてるつもりなんやけどなぁ｣
『それはそうなんだけど、もっとこう、違う形で！』
なんやそれ、と笑う祥生。やっぱり可愛い。癒される。
｢Aが甘やかしてほしいって言うんなら 俺なりに甘やかすけど｣
『え、ほんと？』
｢うん、ええけど。俺なりにやで？ … そんなワクワクした顔で見んといて｣
呆れ顔の祥生に対して私はご機嫌だ。
あんまはしゃぐと転ぶで、とさりげなく手をとられる。
『んふふ、甘やかしてくれてるの？』
｢ちゃう、普通に心配やっただけ。｣
『えー』
｢あ、なあ。今日ウチに誰も居らんねんけど｣
『うん？』
｢ウチ来うへん？服なら貸すし｣
『 … と、言いますと？』
｢お泊まりせえへん？ってこと｣
どう？と顔を覗き込む祥生の顔は完全に悪い人。
何を企んでいるのか、私の返答を伺う余裕な彼。
一方私は、言葉の意味を理解した途端みるみるうちに顔の熱が上昇する。
｢いっぱい甘やかそうと思ってんねんけど。来る？来ない？｣
『い、行きます』
｢ん、じゃあ決まり｣
繋いだ手を再びぎゅっと握り直して、私の一歩前を歩く祥生。触れている部分から熱が伝わる。
好きだなあ。
甘い甘いあなたに、ずっと甘やかされて愛されていたい。
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作者名：ヨカ | 作成日時：2021年8月22日 22時
