度数、君パーセント(一成) ページ7
｢Aさん｣
『ん〜？』
｢飲み過ぎだよ｣
ぽやぽやとする感覚のなか、一成くんの呆れた声が聞こえた。
私の手から、まだ中身の残っているビールの缶を取り上げる。
仕事で嫌なことがあった。
上司のミスを押し付けられかけた。
別の上司が私のことを擁護してくれたおかげで、なんとか難を免れた。
そこまでに至る過程が本当に大変で、ここ数日は心休まらない日が続いていた。
そんな私は、華金を謳歌しようと一成くんとひさしぶりのお泊まり。
そのおかげか、つい何本も缶ビールを開けてしまった。
『くそぅ … あのハゲ頭め』
｢悪口ダメだよ｣
『だってえ … 』
｢ふふ、よく頑張りました｣
そう言って優しく頭を撫でてくれる大きな手。そっと、ゆっくりと、手のひらから伝わる愛情が心地よい。
『一成くん〜』
｢わ、ちょっと。酔っ払いは離れてください｣
思わず彼に抱きついた。
彼のお腹に回した腕、服越しでもわかる程よく鍛えられた筋肉が頼もしいなあと思える。
｢俺もAさんと同じ職場だったらよかったなあ｣
『ウチの会社は一成くんが来るようなところじゃないよ』
｢なんで？｣
『一成くんにはもっと良い会社がある、超ホワイトな会社しか入っちゃダメ』
高校卒業と共に働き始めた私と、その一年あとに大学に進学した一成くん。
今年大学4年生になった彼は、就職に向けての準備を進めている真っ最中なのだ。
歳は一つ下なのに私より落ち着いていてずっと大人っぽい。
『一成くんもあと少ししたら働くんだね』
｢そうだよ、そしたら一緒に住もうね｣
『えっ』
｢だって一人暮らし飽きたって言ってたじゃん｣
プロポーズ紛いな言葉を平気で放つ一成くん。照れているのは私だけ？なんか悔しい。
顔が熱い。これはもう、アルコールのせいではない。
｢俺もね、Aさんのこと支えたいの｣
『もう十分支えてもらってるよ』
｢それは精神的に、でしょ。真面目な話、この先も一緒にいるんだから 金銭面とかいろんなところで支え合っていかなきゃいけないじゃん｣
『そ、それはつまり … 』
｢Aさん、今超おもしろいよ、顔。｣
真っ赤、と笑う一成くん。
これは完全に確信犯だ。
ぷしゅ〜っと音が出るほど茹で上がった私。
そんな私を見て楽しそうに笑う一成くん。
あなたが楽しいなら、それでいいや。
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作者名：ヨカ | 作成日時：2021年8月22日 22時
