カフェインにキスして(奨) ページ6
『奨くん奨くん』
｢ん？｣
『ちゅーして』
｢今？｣
晴れた日曜日の午前10時過ぎ、部屋に射す光がなんとも清々しい。
キッチンでコーヒーカップを手に一息ついていた奨くんにおねだりをする。
｢どうしたの急に｣
『なんとなくしたくなった』
｢今コーヒー飲んでるんだけどなあ｣
眉を八の字にして笑う顔が猫ちゃんみたいで可愛い。
纏う雰囲気がいつも柔らかい。優しくて、人望に厚い彼の性格。言い換えれば、ふんわりと包み込むシルクのような人 … ？
それでいて私よりずいぶんと背は高いし、鍛えられた身体は頼もしい。
気分屋さんだなあ、と奨くんは言った。
『私のこと気分屋にしたのは奨くんだよ』
｢え？そうなの？｣
『もっと寝てたかったのに、叩き起したのは奨くんでしょ』
｢ああ、そういうこと。だからさっきまで機嫌悪かったの｣
せっかくの休日、昼まで奨くんと二人で布団に包まれていたかった。
なのにこの人は、｢せっかく天気の良い休日なんだから｣と言って 半ば無理やり私から布団を剥ぎ取ったのだ。
『奨くん、ほら、ちゅーして』
｢うーん、あとでね｣
ぽんぽんと私の頭に手を置く奨くん。
その手をすかさず掴んで、自分の頬へ擦り寄せた。
｢今日のA、猫みたい｣
『猫は奨くんだよ』
｢なんで？｣
『猫に似てるもん』
そうかなと首を傾げる奨くん。
ほら、その顔。まんま猫だよ。
『おっきい猫ちゃんですね〜』
背伸びをして腕を伸ばした。
ふわっとした彼の頭をよしよしと撫でる。
その瞬間、視界いっぱいが奨くんで埋まる。
同時に、一瞬だけ唇に柔らかく触れた熱。
『ひゃ』
｢ひゃ？｣
『びっくりしたあ … 急にどうしたの』
｢Aがしてって言ったんでしょ｣
また、ゆっくりと近づく。そっと瞼を閉じた。
先ほどより少し長く触れた唇から伝わる熱が、私の心を幸せでいっぱいにした。
『にがい』
｢あ、ごめん。コーヒーの味しちゃった？｣
『うん、した』
べ、と舌を出す私に｢まだAにはコーヒーは早いかな｣と言う奨くん。
もう、子供扱いはしないでほしい。
｢ねえA｣
『なあに？』
｢あと一回だけ、キスしていい？｣
『 … 一回とは言わず、何度でもどうぞ』
こんな、ゆっくりと流れる甘い休日なら 悪くない。
度数、君パーセント(一成)→←完成しないパズルの答え(拓実)
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作者名：ヨカ | 作成日時：2021年8月22日 22時
