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｢はあ、びっくりした｣
『そう？私分かりやすかったと思うんだけど。奨が鈍感なんだよ』
ずっと好きだった奨に思いを告げることがないまま卒業式を迎えた。お互い上京することは分かっていたのだが、当時の私は臆病者だったから｢好き｣の2文字を伝える勇気もなかった。
そのまま時間だけが過ぎて、奨と連絡さえとらなくなって、その時たまたま出会ったアイツの仕草が奨にそっくりだった。
だから好きになった。結局私はアイツに奨を重ねながら付き合っていた。もしかしたら酷いのは私の方なのかもしれない。
『アイツと居ると、なんとなく奨と居る気がしたんだよね。だから好きだって勘違いしてたのかもしれない。別れたあとの結果論だけど』
自嘲気味に笑う私を真っ直ぐ見つめる奨。その視線に捕まれば、逸らすことができなかった。
先程とはうって変わって、私達の間には緊張感が漂っている。
『気持ち悪いよね、ごめん。今の忘れて』
｢忘れるなんてできないよ｣
『 … だよねぇ』
｢ねえ、俺もAのこと好きだったよって言ったらどうする？｣
『え？』
｢ていうか、現在進行形で好き｣
騒がしいはずの店内、それなのに私の耳には彼の声だけがストレートに伝わってきた。
そっと、私の手に自身の手を重ねる奨。みるみるうちに顔の熱が増していく。
｢たぶん初めて話した時から好き｣
『あの、』
｢俺ら、あの頃両思いだったんだね｣
『え、あ、うん。』
｢俺からの提案なんだけど、ひとついい？｣
『 … 聞くだけ聞きます』
｢付き合うことを前提に、これからも定期的に会わない？｣
あれ、奨ってこんなに積極的だったっけ。
私の返事を待つ彼の顔は、もう返ってくる答えを想定しているかのように期待の目で満ちていた。
そんな綺麗な目で見ないでよ。
今すぐにでも、好きと言ってしまいそうで怖い。
『ん、会う。会いたい、です』
｢ほんと？ありがとう｣
嬉しそうに目を細めて微笑む奨。
『でもさ、今はお互いアルコール入ってるから』
｢うん？｣
『また改めて、ちゃんと告白してよ。』
｢ふふ、もちろん。何回でも言うよ｣
『ありがと』
その時は私も、あの頃の気持ちも全部ひっくるめてあなたに好きって伝えるから。
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作者名：ヨカ | 作成日時：2021年8月22日 22時
