生きる恋を、大きくなる愛を【短編集】 (ページ14)

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柘榴を愛した(瑠姫) ページ14

✱少々暴.力的な表現が含まれます✱

必死になって走った。街頭に照らされた道路は、昼間とはうって変わって薄気味悪い。

もう夜も寝静まった頃、瑠姫のいるあのアパートを抜け出した。

久しぶりに体内に取り込む外の空気を味わう暇もなく、ただ必死に走る。

もう、身も心もボロボロだ。瑠姫の愛情に耐えられなかった。

もっと違う形の愛情だったら、私達は幸せな恋人のままでいることができたのに。

彼は、力づくな愛情を選んでしまった。

まだできて間もない痣が鈍く痛む。せっかく前の痣が消えてきたと思ったんだけどな。

『 … 私達、どこで間違えたんだろう』

足を止めて空を見上げた。上がる息を落ち着かせるように、ゆっくりと深呼吸をする。

『はは、やっぱり見えないや』

街頭の灯りが邪魔で星一つ見えない空に、私の乾いた笑い声が溶けていく。

少々ロマンチストな彼は星が好きだった。星座とか神話とか、そんな話をキラキラとした目で話す彼の笑顔が好きだったし、愛おしかった。

それももう過去の話。今は、彼からの愛に潰れた。ただそれだけ。

『とりあえず、電話 … 』

匿ってくれてくれそうな宛を探す。

汐恩なら、まだ起きてるかな … 。

｢A、こんな遅い時間にどうしたの？｣

突然後ろから肩を掴まれた。今は聞きたくない声の主なんて、すぐに分かる。

『瑠姫 … っ』
｢目覚ましたらAいないんだもん、心配だから探しに来ちゃった｣

そう言って彼が取りだしたスマホの画面には、小さな赤い点が乗る地図。

いつの間に GPS機能なんてつけてたんだろう。

震える私を酷く優しい笑顔のまま抱きしめる瑠姫。

耳元にかかる息に、思わずひゅっと喉が鳴る。

｢まさかだけど … 逃げようなんて思ってないよね｣
『そんな訳、ないよ』
｢ふふ、そうだよね。まったく、心配ばかりかけるんだから｣

行こうか、と手を引かれる。掴まれた手首が痛い。

もうこの人から逃げるなんてできない。好きになったあの日からきっと、私の人生は瑠姫の手の中にあったんだ。

流れる涙を気づかれないようにそっと拭う。

次はいつ外に出られるのだろう。

｢俺から離れちゃダメだよ、絶対に｣

静かに笑う瑠姫は恐ろしいほどに綺麗だ。

『 … うん、もちろん。』

神様がいるのなら、どうかこの狭すぎる世界から私を連れ出して。