キミの嫌いなところ(拓実) ページ33
｢妹みたいなもんやんな｣
そう言って私の頭を撫でる拓実のことが嫌いだった。
高校生になっても 私と拓実は仲が良かった。
付き合ってるのかとからかわれることも度々あった。
その度に拓実は私のことを｢妹｣だと言う。私、別に拓実に面倒見てもらったことないんだけどな。
ずっと拓実だけを見ていた。私の中の世界なんて、拓実とそれ以外で成り立っている。
『拓実』
｢ん？｣
『今日部活ないよね？うちでゲームする？』
｢あー、ごめん。放課後予定あんねん。また今度でええ？｣
最近、拓実の付き合いが悪いなって思う。
何か違和感を感じる。長年一緒にいたからこそ働く勘が、胸騒ぎを起こして止まってくれない。
『予定って、誰かと遊ぶの？』
｢ … うん、そんなとこ｣
拓実は目を合わせてくれなかった。はぐらかすように、｢次の授業めんどいなあ｣と机にだらんと突っ伏す拓実を じっと見ていた。
｢あの、川西くん｣
聞きなれない可愛らしい声がする。そちらを向けば、拓実の目の前に 隣のクラスの子が立っていた。
｢あ、小坂さん！｣
｢今日の放課後なんだけど、先生に呼ばれたから少しだけ遅れるかも … ｣
｢ええよ！全然気にせんで！俺ここで待っとる｣
｢ごめんね、ありがとう。｣
｢えっと、彼女さん … ？お邪魔だったかな？｣
小坂さん、と呼ばれた彼女は申し訳なさそうにこちらを見た。
｢いや、全然！ただの幼馴染で妹みたいなもんやから気にせんといて｣
拓実の言葉に小坂さんは分かりやすく胸を撫でおろした。
… なんだ、そういうこと。
じゃあまた、と教室を出ていく小坂さんの背中を見送る。
『好きなの？あの子のこと』
｢そんなんちゃうって｣
ほんと、拓実って分かりやすい。
赤く染った頬を隠すように両手で顔を覆う拓実の肩をぱしっと叩いた。
｢いったあ！何すんねん、怪力女｣
『そんな強く叩いてないでしょ』
｢叩くことが問題なんやけど？｣
拗ねた拓実は頬を膨らませた。
可愛いなあ、そういうところも好きなんだけどな。
拓実、あの子はやめておきなよ。
きっと相性合わないよ。根拠はないけど、そんな気がするもん。
なんて言えるはずもない。ただの意地悪いヤツになってしまう。
こんなにも好きで苦しいのに 私の気持ちはこれっぽっちも伝わらない。
嫌いだなあ、鈍感な拓実も、意気地無しの私も。
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作者名：ヨカ | 作成日時：2021年8月22日 22時
