��.己ガ為 ページ2
織姫side
入学当初、このクラスは三十六人だった。
でも、今は三十五人。
「はい、黙祷」
クラスメイトの巴Aちゃんが、入学から二ヶ月後、殺されてしまったからだ。今日は、その月命日。
「はい、終わり。十分後グラウンド集合なー」
「なあなあー誰か俺の体操服しらね?」
「あ、髪ゴム忘れたー」
「私持ってるよ」
「さんきゅ!」
夜道を歩いていたとき、後ろから刺されたらしい。犯人はまだ捕まっていない。いわゆる通り魔事件として処理され、現在も操作中。
「昨日の笑点観た?」
「観た観た!すっごい面白かったよね!」
Aちゃんの机は、入学当初と変わらず窓際一番後ろにある。
いつも、静かに窓の外を見ている子だった。誰とも話さないで、授業も殆ど聞かない。
だからなのか、クラスの皆からは距離を置かれていて、正直、Aちゃんが殺されてショックだったにしろ、悲しんだ人は少なかった
「…織姫?」
でも、私は知ってる。Aちゃんが、本当は良い人だったこと。
「…織姫、先に行っとくよ」
綺麗な子だった。真っ白な髪に、薄く透き通った紫の瞳で、睫毛も白くて、笑うと、少し可愛くなる
私は知ってる。
私は、憶えてる。
〆
「…あれ、たつき、井上は?」
「織姫なら腹痛…って、一護か。一護ならまあいっか」
「まあいっかってなんだよ」
「…んで、井上は?」
「教室」
「…あー、なるほどな」
「…あの子、最初ずっと話しかけてたじゃん。何回も無視されてたのにさ。それで、やっと仲良くなれて、二人でお出かけまでするようになったのに…」
「…」
「…犯人、早く捕まんねぇかな」
「…たつき、お前優しいな」
「は?」
【目まぐるしく進んでいく日常の中で、人は悲しみよりも今目の前にある楽しさを優先する】
【それは、悲しみや苦しみで自らの心が壊れないようにする自己防衛】
【言わば思考停止状態だ】
【だが、稀に悲しみを抱えたまま、そこから動けなくなってしまう者もいる。向き合おうとする】
【井上織姫は、その類の人間だった】
【だが、そんな彼女でも、前に進んでいかなければならない事態にもうすぐ直面する】
【更に二ヶ月後、クラスに、朽木ルキアが転校生としてやって来る】
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作者名：青 | 作成日時：2021年3月8日 22時
