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4_キオク▪ノ▪カノジョ ページ4

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 『だ、太宰様!ご機嫌、麗しゅうてございます…』

 「うん、おはよう魅緑ちゃん。」


 

 頭に残っているのは頬を真っ赤に染め上げ、瞳を揺らす彼女。
 
 素朴で愛らしさが強かった彼女。

 家族に大切にされてきた箱入り娘。

 世界の汚さを知らない純白で綺麗な幼い女の子。





 この世の何よりも美しくて、生を謳歌する"生きている"輝かしい瞳。

 私とは正反対の彼女。






 忘れる筈もない。私が唯一ポートマフィアで情が湧いた者がいた任務。
 何故かはわからないけれど特に意味は無かったし殺す必要も無かったから
 良いかとつい気を許してしまった女の子




 私は殺さず彼女を、火蕨魅緑を逃がした。



 此れを機に社会の荒波に揉まれて、ボロボロになって、煤だらけで灰を被って
 私の様に、私の所まで堕ちれば良いと思った。

 それならこんな私が隣にいても良い気がしたから


 只、結果はどうだろうか。






 久々に逢った彼女に私は息を飲んだ。
 私に見向きもせず、臆さず、戸惑わず、私の真横を通りすぎる彼女は、






 顔色は変わらず、冷静で何にも臆さないで力強い瞳。

 圧倒的に美しく、妖艶で絢爛。

 酔いも甘いも乗り切って一人で強くなった女の人。

 社交的で善意も悪意も噛み分ける大人な女性。

 様々なことが変わっていた。


 

 けれども




 一番変わって欲しかった生を謳歌する輝かしい瞳はそのままだった。









 『ではまた逢いんしょう。おさらばえ』




 なんて私の知らない笑みを浮かべる。








 


 何故廓言葉を使っているんだい?

 何時から髪を伸ばし始めたんだ?

 どうしてそんな乱歩さんと親しげなの?

 当時は持っていなかった異能を何故持っている?

 

 わからない。知らない、知らないことが多すぎる。記憶の君とは違いすぎる。


 
 






 「太宰。」






 ふと後ろで響く少し冷たい声に振り向く。

 

 「…………どうしました?乱歩さん。」


 真顔で此方を見つめるのは乱歩さん。




 「其れはお前が知らなくて良いことだ。魅緑を弄んだお前が知ることじゃない。」





 それだけ言って足音が過ぎ去るのが聞こえた。





 そう、その通り。



 彼女を弄んだのは私。彼女の両親を殺したのが私。彼女には何もされていない
 私に害はない。放っておいても問題ない。彼女のことは知らなくても良い。




 知れる、人間ではない。




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5_ウツクシイ▪キミノ▪トナリデ→←3_コッチ▪ヲ▪ムカナイ



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あっぴー - あっ…好きです!おもしろいです! (2月18日 23時) (レス) @page13 id: 9335c42a96 (このIDを非表示/違反報告)
アディショナル(プロフ) - とってもおもしろいです!異能力は雷電将軍かな?頑張ってください! (2月9日 23時) (レス) id: c16c35d125 (このIDを非表示/違反報告)
ふらんふらん(プロフ) - とてもとてもべりーべりー最高です。夢主様の口調やら乱歩さんと太宰さんとの関係とか諸々好きです。とても尊敬です。 (2月3日 23時) (レス) @page8 id: 13e4982fef (このIDを非表示/違反報告)
すあ - とてもおもしろいです! (1月25日 15時) (レス) @page5 id: b296360cb1 (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺 - 夢主ちゃんの使ってる言葉からして、めっちゃ好きです。がんばって下さい! (1月15日 13時) (レス) @page3 id: b34111cf4c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:糸町 | 作成日時:2024年1月8日 21時

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