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14_ゼンシン▪ト▪アトズサリ ページ14

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 「好き」

 『…………謝罪は?』

 「好きだよ」

 『気持ち悪い。やっぱり大っ嫌いよ、アンタなんか』



 大嫌いだった筈の生を謳歌する瞳。目を背けたかった美しく輝かしい瞳。けれども今は
 その瞳で自分を見てくれている事が堪らなく嬉しい太宰。


 その麗しい口からどんなにキツイ毒が吐かれたとしても。


 「良いよ嫌いでも。もう私は君にベタ惚れだから」

 「君が私をどんなに嫌っても私はもう諦めきれない。だから覚悟してね」




 「此れから君を本気で惚れさせに行くよ」



 太宰治に弄ばれた惨めな私へ
 どうやら未々彼に弄ばれるようです。

 
 まあ、ひとまず



 『お、おさらばえ!』





 逃げるに限ります。

 ヨコハマの街を恐るべきスピードで駆け巡る彼女は大急ぎで電話を掛ける。




 『条野!』

 【何ですか、耳元で怒鳴らないで下さい。】

 『助けてくだしゃんせ。』

 【急に冷静にならないで下さい。何処に居るんですか】

 『分かりんせん』

 【切りますね】

 『ヨコマハ中央通りの七丁目でありんす!』


 
 そこまで言うと流石に疲れて来たようで息が切れて肩を上下するようになって来た。
 早く来て欲しいと願いながら彼の迎えを待っていると



 「そうだと思って此処に居ますよ。」

 

 足元が突然浮き、体全体に暖かみを感じた。



 『流石でありんす。頼りがいしかありんせんね。』

 「もっと頻繁に逢いに来て下さい。貴方が居ないと隊長の騒がしさが増すんですよ!」



 目の前の彼はお母様の様に小言を言い、乱れた髪を片手で私の体を抱えながら耳に掛け
 直してくれる。

 
 
 『嫌やわぁわっち。あの爺セクハラばっかしてきんす。』

 「叩いてでも止めますから逢いに来なさい。」

 『……はーい、畏まりんしたーぁ。』



 普通に会話をしているが条野は物凄い速さで魅緑を抱えて走るので舌を噛まないか心配で
 ソワソワしている。



 『条野ー。』

 「何ですか」

 『お酒が飲みとうございんす。』

 「駄目です。」

 
 魅緑が本当に参っている事がわかる。彼女は意味の無いお喋りは余りしない。けれども
 今している。それに加え好きではない酒を飲みたいと言うのは相当参っていることが
 わかるだろう。



 「寝ていて結構ですよ」

 

 自身の帽子を彼女の頭に被せ視界を遮って眠気を誘う。
 条野なりの気遣いである。



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あっぴー - あっ…好きです!おもしろいです! (2月18日 23時) (レス) @page13 id: 9335c42a96 (このIDを非表示/違反報告)
アディショナル(プロフ) - とってもおもしろいです!異能力は雷電将軍かな?頑張ってください! (2月9日 23時) (レス) id: c16c35d125 (このIDを非表示/違反報告)
ふらんふらん(プロフ) - とてもとてもべりーべりー最高です。夢主様の口調やら乱歩さんと太宰さんとの関係とか諸々好きです。とても尊敬です。 (2月3日 23時) (レス) @page8 id: 13e4982fef (このIDを非表示/違反報告)
すあ - とてもおもしろいです! (1月25日 15時) (レス) @page5 id: b296360cb1 (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺 - 夢主ちゃんの使ってる言葉からして、めっちゃ好きです。がんばって下さい! (1月15日 13時) (レス) @page3 id: b34111cf4c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:糸町 | 作成日時:2024年1月8日 21時

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