双悪と虎 ページ7
Aside
私はその話を聞いて耳を疑った。だって、私が最後にその遺体を見た時は、ただ額に穴が空いていた死体だったからだ。
今の話だと、私が帰った後にまた誰かが来て……。
『…』
そこで私はヒュッと息を飲む。もし、佐野が私が帰ったその後に戻ってきたとしたら?でも、一体何のために?死んだ相手にそこまでする必要なんて無いはずなのに。そんな考えがグルグルと私の中に流れる。コーンスープを持つ手が微かに震えた。
「だからお前も気をつけろよ…って、A?」
『あ、うん。気をつける』
思わず考え込んでしまい、一虎の返事に遅れてしまう。もうこれ以上、彼らに心配させてはいけないのに。頭では分かっているものの、仕事の疲れのせいか、どうしてもボーッとしてしまう。一虎は、そんな私を見て再び口を開く。
「…久しぶりに俺のケツ乗る?」
『え?』
「風に当たれば少しは気分も上がるでしょ」
『…』
また気を使わせてしまった。申し訳なさを感じながらも、私は何十年ぶりかに一虎のバイクに乗った。出発する前に千冬くんに声をかけると、「気をつけてくださいね」と言ってくれた。久しぶりのバイクは、とても心地良くて、嫌なこと全部忘れてしまいそうだった。
「気持ち良いだろ、バイクは」
『…うん。凄く気持ち良い』
「このまま飯でも食ってく?」
『どうせ私の奢りでしょ』
「千冬にお小遣い貰ったから俺が奢る」
お小遣いって小学生かよ。あ、でもそう言えばコイツこの前パチンコに全部スったって言ってた気がする。そりゃお小遣い制にもなるわ。納得。千冬くんは本当に一虎の扱いを良く分かってる。
こうして乗るがまま連れられたのは、双悪と暖簾に書かれたラーメン屋。ここのラーメン屋も、私の昔からの友人が経営している場所だ。ここに足を運ぶのは久しぶりな気がする。
「いらっしゃーい…って、意外な組み合わせ」
「何?とうとうお付き合いでも始めたわけ?」
「誰がこんな女に惚れるか」
『その言葉、そっくりそのまま返してやるよ』
私と一虎は、カウンター席に座ってメニュー表を見る。ここのオススメは黒トンコツ“アングリー”と白トンコツ“スマイリー”。でも、見た目と味は一切比例しない。私は辛いのが少し苦手だから、黒トンコツの“アングリー”を注文した。
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エリザベス女王 - う、、、目から滝が、、、!武道のタイムリープで幸せになってるといいですねぇ、、、✨三途君の恋が、、、あの裏には恋心があったなんて、、、⁈伏線回収上手すぎです‼︎素敵な小説ありがとうございました! (2022年7月29日 19時) (レス) @page47 id: c75fcc9307 (このIDを非表示/違反報告)
ひめ☆そら(プロフ) - ち ゆ。さん» ちゆたん…!!こちらこそ読んでくれてありがとう( ᵒ̴̶̷̥́ ⌑ ᵒ̴̶̷̣̥̀ ) (2021年10月30日 16時) (レス) id: f06e616829 (このIDを非表示/違反報告)
ち ゆ。(プロフ) - 最初から最後まで感情が揺さぶられて毎度ページを開く度にドキドキしまくった…(><)ラストの方ほんとにしんどくて心臓きゅってなった(;;)辛いけど綺麗な終わり方しててとても感動しました!素敵な作品をありがとう! (2021年10月30日 12時) (レス) id: 7bb8e59749 (このIDを非表示/違反報告)
ひめ☆そら(プロフ) - ゴリラの末裔さん» お返事遅くなってしまい申し訳ございませんっ!勿体ないお言葉…!!ありがとうございます!!! (2021年10月13日 23時) (レス) id: f06e616829 (このIDを非表示/違反報告)
ゴリラの末裔 - 神はここにいた、、、、、 (2021年10月10日 23時) (レス) @page47 id: 566df7a38f (このIDを非表示/違反報告)
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