【佐野万次郎】呪いのような口付けを

タイムリープ ページ32

Aside







『ほら、この猫ちゃんカゴしまって』

「分かってるって」







あれから一年。私は千冬くんのペットショップで働かせてもらうことになり、再び社会人として貢献している。前の企業とは違い、知り合いってこともあるせいかとても働きやすくて居心地も良かった。最初からこうしてれば良かった。

そして、今目の前には千冬くんと武道が話をしていた。一虎は猫ちゃんを持って色々作業をしていたため、二人の会話に差程集中していなかっただろうが、私はどうしても二人の会話が気になって仕方なかった。


武道も佐野の行方を気になっているようだったが、その会話の中で一番気になったのが“タイムリープ”という言葉であった。







「マイキーくんはきっと自分の道を見つけたんだ」

『…』







そんなわけない。そんなわけがない。

ついつい怒りで私の持っていた猫ちゃんを掴む力が強くなる。そのせいかニ”ャー、と怒られてしまった。一虎には「ダッサ」と笑われた。







(……タイムリープ)








“俺の隣にいたら、お前は幸せになれない”







『…』







不意に、あの時の言葉を思い出した。佐野が突然別れを告げた、東卍が解散したあの日の夜の事を。ずっと疑問に思ってた。まるで未来を分かってるかのような口振りで言う彼を。全て背負って先に進む彼を。

その答えを、武道に聞けば分かるんじゃないか。




私は、武道が店を出て行った後に高速で仕事を終わらせ、店を出た。すると、向かい側からさっきまで店にいた一虎が歩いて来た。どこ行ってたんだお前は。







『一虎、武道見なかった？』

「あぁ、それならついさっきあそこで別れたばっか。走ったら追いつくと思う」

『そっか、ありがとう。じゃあまた明日ね、お疲れ様』







私は一虎にそう言うと、直ぐに走り出した。一虎の言う通り、走って直ぐに武道の後ろ姿が見えたので、私は彼の名を呼び引き止める。不思議そうにこちらを見た武道はその場で立ち止まった。







『はぁ、はぁ、』

「Aさん、どうしました？」

『武道、“タイムリープ”って何？』

「…え？」

『お願い、全部話して』

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