燃やされました ページ21
Aside
『え?ちょっと待って解雇?』
「あの会社、俺らと契約してるのを利用して外部に俺らの情報を売ってた」
『それって…』
「俺たちを裏切ったんだ、もちろん殺す」
今までとは違う低い声が聞こえて、私は思わず口を噤む。佐野は何も言わないまま私を見つめる。しばらくすると、彼は私の目の下をそっと親指でなぞって、先程とは違う優しい声が聞こえてきた。
「お前隈酷いぞ」
『…佐野には言われたくない』
「俺はいいんだよ」
『良くないよ心配する』
私がそこまで言うと、リビングに着信音が鳴り響く。それは佐野が履いている私のスウェットズボンのポケットから聞こえてきていて、きっと着替える時に入れていたのだろう。佐野はポケットからスマートフォンを取り出し再びソファに座ると、電話の相手と話し始める。私はそんな佐野の隣に座った。電話の相手は一体誰なんだろう。梵天のメンバーなのだろうか。…梵天。
(………あ)
そこで私は、やっと自分が佐野と共に時間を過ごして浮かれていたことに気づいた。佐野には聞かなければいけない事が沢山あるんだ。一虎の言っていた高架下の事件のこと、そして今朝の三途くんが起こした事件のこと。後者に関しては今朝それで具合を悪くしていたのに、どうして佐野と出会って直ぐに思い出せなかったのだろう。
すると、隣から「燃やせ」という佐野の声と、同時にピッと電話を切る音が聞こえてきた。
『…ねぇ佐野、聞きたいことが幾つかあるんだけど』
「悪い、もう行く」
『えっ、ちょっと待って!』
スタスタと玄関の方へと歩いていく佐野の腕を掴む。それは質問に答えて欲しかったからなのか、それとも佐野と離れたくないという感情のままに動いたのか。この時の私の本心は自分にも分からなかった。ただ複雑な感情が私の中に残る。
『この前の高架下の事件と三途くんが起こした事件、どっちもアンタの指示なの?!』
「…」
『私っ、どっちも事件が起きる直前に
必死に私は佐野に問うが、彼は何も言わないままその腕を振りほどいて再び歩き始める。佐野が玄関の扉に手をかけた時、こちらを振り返り、何も言わないままキスをしてきた。彼はいつもそう。キスをして私の前からいなくなる。
佐野がいなくなった玄関に一人残される。しばらくして同僚からメールが届いた。“会社が燃やされている”というメール内容だった。私は佐野の先程の言葉を思い出し、ハハッ、と乾いた笑みを零した。
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エリザベス女王 - う、、、目から滝が、、、!武道のタイムリープで幸せになってるといいですねぇ、、、✨三途君の恋が、、、あの裏には恋心があったなんて、、、⁈伏線回収上手すぎです‼︎素敵な小説ありがとうございました! (2022年7月29日 19時) (レス) @page47 id: c75fcc9307 (このIDを非表示/違反報告)
ひめ☆そら(プロフ) - ち ゆ。さん» ちゆたん…!!こちらこそ読んでくれてありがとう( ᵒ̴̶̷̥́ ⌑ ᵒ̴̶̷̣̥̀ ) (2021年10月30日 16時) (レス) id: f06e616829 (このIDを非表示/違反報告)
ち ゆ。(プロフ) - 最初から最後まで感情が揺さぶられて毎度ページを開く度にドキドキしまくった…(><)ラストの方ほんとにしんどくて心臓きゅってなった(;;)辛いけど綺麗な終わり方しててとても感動しました!素敵な作品をありがとう! (2021年10月30日 12時) (レス) id: 7bb8e59749 (このIDを非表示/違反報告)
ひめ☆そら(プロフ) - ゴリラの末裔さん» お返事遅くなってしまい申し訳ございませんっ!勿体ないお言葉…!!ありがとうございます!!! (2021年10月13日 23時) (レス) id: f06e616829 (このIDを非表示/違反報告)
ゴリラの末裔 - 神はここにいた、、、、、 (2021年10月10日 23時) (レス) @page47 id: 566df7a38f (このIDを非表示/違反報告)
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