【佐野万次郎】幻の副総長

あの日以来 ページ9

【2005年7月4日】
Aside







「おいっ！しっかりしろ！」

『っ！！！！！！』







目を覚ますと、目の前にはケンちゃんがいて、私の頬には一滴の涙がこぼれていた。







「おい、お前大丈夫か」

『………』

「凄ぇ魘されてた。怖い夢でも見てたか？」







私は手の甲で頬の涙を拭き、ケンちゃんの方を見る。







『…分からない』

「は？」

『どんな夢だったのか、忘れちゃったの』







＿＿＿でも、それは絶対に忘れちゃいけない夢だったの。








私がそう言うと、自然に涙が溢れてきた。別に泣きたいわけじゃないのに。すると、ケンちゃんは急いで部屋を出ていき、寝ているマイキーをおんぶをして連れてきてくれた。マイキーは半開きのその目で私が泣いているのを見ると、直ぐにパッチリと目を開けてケンちゃんから降りる。







「…夢、見たのか」

『うん』

「よし、じゃあ今日は学校休もう。場地も呼んで一緒に楽しいことをしよう」







マイキーはそう言って微笑みながら頭を撫でてくれた。それが嬉しくて、温かくて、私の涙も段々とひいていった。







「ごめん、ケンチン。今日は帰って」

「…分かった。また必要なとき呼んでくれよ」

「ありがとう」







夢の内容は覚えていなくとも、私が夢を見た。これは紛れもない事実である。それは、これから先、何か“自分にとって”嫌なことが起きてしまうということ。







『…夢を見たのは“あの日”以来だよ』

「大丈夫。何が起こっても俺はずっとAの傍にいるから。場地もそうだ」

『…ありがとう、マイキー』







そしてその数十分後に、慌ててバジリンがペヤングを持ってやって来た。







「何でペヤング？」

「いや、夢見たから腹減ってるだろうなと思って」

「『馬鹿なの？』」

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