...282 ページ42
長いこと夢を見た。
子供の頃，父と母と公園で遊んだ記憶。
エリーと初めて出会った日。
セブルスと二人、図書館で勉強している姿。
教壇に立ち生徒からの質問に答える自分。
特別な日ではない
なんてことない日常を切り取った記憶。
“でもそろそろ皆が寂しがってるわよ”
“今の彼には私じゃない、あたなが必要よ”
二人の女性の優しい声が頭の中に響いた。
一人はお母さん？
声だけでなく顔も見たい。
逢いたいよ。
もう一人は？
どこかで聞いたことのある声。
母とは違う、また美しい声。
答えは分からぬまま導かれるように暗闇から
光ある方へと足を進めた。
「あ、先生！！
ホワイト様が目を覚ましました。」
「本当か！今行く！お父様も呼べ！」
見たことのない明るい部屋。
自分はベッドに横たわっているのか。
体が動かない。
何故ここにいるのかも分からない。
すぐに療者が来て体調の確認をされた。
しばらくすると父親も到着した。
「A！！！」
泣きながら抱きしめようとしてきたが
まだ起きたばかりということで接触は止められた。
それでも泣いてこちらを見ている。
『とうさん、、？』
顔も動かせず、掠れた声しか出なかった。
「お父様、娘さんは少し長く眠っていただけです。
体に異常はありませんのでこのまま回復すれば
退院できますよ。」
癒者と名のつく人に感謝している父。
するとここは病院であろうか。
そうか自分は倒れて、、、やっと思い出してきた。
記憶のフラッシュバックに頭痛を感じたAが
急に苦しみ出した。
「いかんいかん！
ゆっくりでいいんだ、少しずつ話すから
今は急に思い出す必要はない。」
癒者の言葉に素直に従い、再び頭を空にして目を閉じた。
「A、本当に良かった。
長い間眠っていたんだよ。
もう心配で、、、。」
まだ泣いている父に軽く手を上げ応えた。
『ありがと、だいじょぶ』
意識がはっきりするまで隣にいるように
指示された父は隣に座り涙を拭いていた。
ぼやけた視界が晴れてくるとベッドの周りには
花や手紙が沢山置いてあることに気づいた。
『ねぇ私、どうなった？
倒れたことまでは覚えてる。』
体調が安定しない時期なので
会話による脳への刺激は避けたかった。
父親も返答に困っている様子だったが目で訴えかけた。
「あのまま1ヶ月以上ここで寝てたんだ。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 346人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：maya.t | 作成日時：2021年5月17日 21時
