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“カチャ”
手首は魔法でつけられた手枷が。
これで自由は奪われた。
『行ってくるね、ハグリッド。』
「気をつけてなA。
先輩として一つ言っておくと、食事はどれも
食えたもんじゃねぇがハムサンドイッチだけは
まぁまぁイケるぞ。」
『ふふ、分かったわ。』
「A、気をつけての。」
『校長、行ってきます。
私が戻る日までセブルスをよろしく
お願いしますね。』
「勿論じゃとも。」
「校長、、、！」
Aはわざとスネイプが腹を立てるよう
からかったが、彼は彼女の父親が見ている手前
あまり大きい声は出せなかった。
『セブルスもまたね。』
「あぁ、やっと手に入った静かな日常を
楽しみながら待つとしよう。
これは我輩から部下への餞別だ。」
いつも通り嫌味をたっぷりと吐き出した彼は
白い便箋を手渡してきた。
何だ、とすぐさま魔法省の人間が魔力を確認するも
ただの手紙だと確認された。
『向こうで読む。ありがと、教授。』
それを受け取るとき、少しだけ手が触れた。
“お前なら大丈夫”
そう触れた指先から伝わった気がした。
「行こうか、A。」
父に促され、ついに城の門を出た。
歩き出してからはもう振り返らなかった。
「ここから必要以上に余計な口を叩くな。」
「父親とて警護人として同行を許されたのだ。
容疑者を擁護するような行動をとれば
お前も罰せられる。」
「もちろん弁えているよ、何度も聞かせるな。」
父と役人との会話を聞きながら森を抜けようと
した所で、草陰から1匹の黒い犬が現れた。
「何だコイツは！」
急いで来たのか息が上がっているその口には
かぼちゃジュースの瓶が咥えられている。
『すみません、私の飼ってる犬なんです。
よく城から逃げ出しちゃって。
ほらカプチーノ！ 早く戻りなさい。』
シリウスだと気づいた彼女は咄嗟に思いついた
名前を呼び、彼から茶色い瓶を取り上げた。
そのガッシリとした犬には不釣り合いな名前に
周りの大人達は笑ったが、それがかえって彼から
注意を逸らす良い結果となった。
ハリーの最終試合の朝、彼女がシリウスに送った
小包の中にはこのジュースを含めた食料と
彼女が見た未来について記した手紙を入れていた。
おそらくこの中には彼の返事が入っている。
気付かれぬよう瓶から羊皮紙を抜き取り、
そして犬を撫でた。
『あなたまでお見送りどうも、カプチーノ。』
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作者名：maya.t | 作成日時：2021年5月17日 21時
