My Lord.6 (ページ8)

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「今日は詳細を問わんようじゃの。」

『聞いたら教えて下さいますか？』

「じきに君にも分かることじゃ。」

『ほらそれ、いつも教えてくれない。』

そうかの？と長老は笑った。

『あの、昨日はありがとうございました。
　すぐに城に戻らなくてごめんなさい。』

「その様子じゃセブルスにこっぴどく絞られたかの？
　先程彼も挨拶しに来てくれたが、君と一緒に
　来たのではないのかと尋ねたら黙って部屋を
　出て行ってしもうたわ。
　A、わしは君を呼び出そうと思って
　手紙を出したのではない。
　君の認識で合っておるぞ。」

『はい。』

「でも、あの印が打ち上げられた以上
　着実に恐怖は甦らんとしている。
　己がどんな選択をするかは己次第じゃが、
　くれぐれも後悔ない道を選ぶのじゃ。
　運命を共にするということは楽しい事
　ばかりではない。むしろ苦しみが大半であろう。
　君が一番分かっていると思うがの。」

きっと校長が言っているのは私の選んだ人、
私の選んだ道のことだろう。

彼の腕には消せない過去と未来への責任が
刻まれている。

そんな茨の道を歩む彼の横に、
自ら私も飛び込もうとしている。

いくら蔓に絡まり血が出ようとも
片方が倒れようとも進まねばならない。

だがそんな立派な覚悟も
最初から備わってるはずもなく。

得体の知れぬ恐怖と戦いながら生きること。

常に別れと隣り合わせで生きること。

今は言葉の重さだけがのしかかり、
この先起こることなんて考えたくもなかった。

『校長、お願いがあります。
　もし私が彼に相応しくない人間だと
　思ったらすぐに教えてください。
　私頭悪いのでそういうの気付かなそうだから。』

「それで、君はどうするのかの。」

『この世界から消えますよ。
　こんなに大好きなのに彼のお荷物になんて
　なりたくない。
　だからって、離れたところで未練タラタラ、
　きっと私にとってその後の人生なんて
　つまらないものでしょうから。』

笑って答えると、広間の奥からスネイプが
いつもの早足でローブを靡かせて来た。

「君がそう望むなら仕方あるまい。
　だが今はの、君の事を誰よりも必要としておる
　はずじゃ。自信を持って。」

『ふふ、ありがとうございます。』

「ここにいたか。
　さっさと支度しろ、汽車がやってくる。」

『はいはいすみません。』

半月メガネの奥にある瞳は二人の背が
見えなくなるまでそちらを見つめていた。