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外には真っ白な雪が降り積もり、
隙間風が通り抜けるこの部屋は凍えるほどに寒い。


あの時から全く変わらない埃だらけの空間に
なぜ自分は連れてこられたのだろうか、
ブルブルと震えながら彼の様子を伺う。


「インセンディオ」


スネイプがすかさず暖炉に炎を出せば
幾分温かくなった。

それに割れた窓と穴の空いた壁も全て塞いだ。



「A」


そう呼ばれた方を見ても表情一つ変えない彼が
立っているだけだった。


「目を瞑れ。」

『なんで?』

「早くしろ。」


疑問に思いながらも言われた通りにした。

城から漏れる音楽が小さくこちらまで届いている。


Aは不意にギュッと体が締め付けられる
感覚がして目を開けてしまった。


(え、、、?)


次の瞬間目に飛び込んで来たものは目の前に
ある大きな姿見と、薄みどり色のドレスを着た
自分だった。

髪や化粧まで整っていて
これが現実なのか理解が追いつかない。



驚いていると隣にスネイプが映る。


「似合ってる。」


鏡を見つめる彼の横顔はどこか誇らしげで
満足そうにも見えた。




『これみぞの鏡じゃないよね?
 現実だよね? どうなってるの?』



「魔法だ。」



『いやそういう問題じゃなくて。
 なんで私ドレスなんか着てるの?』



戸惑う彼女に対しスネイプは落ち着いている。


「お前の感情を読み取るなどいとも容易い。
 どうせ最初から舞踏会に出るつもりなど
 無かったのだろう。」


『それじゃあ何でこんな格好に』


「先程の涙だ。 それで確信した。
 お前は何よりもこの準備にかけてきたんだろう。
 もう無理しなくていい。」



『セブルス、、、』



改めて彼には敵わない。

何をするにも一枚上手で、
自分なんかいなくても
彼一人で生きていけるような気がする。

自分の情けなさに嫌気がさす。



「そんなことない。」

『へ?』

「またそれ、心の声」

『あ、ダダ漏れね、失礼しました。』



へへ、と苦笑いしていると少しひんやりした手に
両頬を包まれた。

正面から見つめられて何だか照れてしまう。




「私の側にいてくれないか。
 こんなそそっかしくて煩いやつでも、
 横にいないとなると調子が狂うもんだ。」



『そこは素直に寂しいって言ってくださいよ。』



「断る。」






二人は微笑み合い口付けを交わした。









『そういえばドレスのサイズ、
 よく分かったね。』


「おぼろげだが、前に触った感覚で。」


『変態!!』

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作者名:maya.t | 作成日時:2021年3月21日 8時

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