My Lord.6 (ページ22)

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Aは朝からフリットウィックと二人で
会場全体に氷を敷き詰めていた。

『教授、もう衣装も完璧なんですね。』

「私はイベントごとには余念が無いからね。
　君こそ何でパーカーにジーンズ姿なんだい？」

『私なんかパパッと着替えちゃいますから
　大丈夫ですよ。』

「早く終わらせるよう頑張ろう。
　こんなに美しい会場をセットしてくれたんだ、
　君こそが中心で踊るべきだよ。」

『ありがとうございます。』

Yule Ballの舞台となる大広間は普段の雰囲気とは
一変して幻想的な空間となった。

天井から下がる大小様々な氷柱が光を反射して
煌めき、中心にある大きなツリーが
見るものを圧倒する。

『アグアメンティ、グレイシアス』

Aが各テーブルに氷の城を作る中
教授は巨大なツリーに飾りをつけていく。

何時間作業しただろうか、この日のために
準備しておいた飾りを全てつけ終える頃には
少しずつ生徒が集まり始めていた。

「ありがとうA。君のセンスには脱帽だよ。
　あとは私一人で出来るから、さぁ行きなさい。」

フリットウィックがそう笑って促すので
これ以上心配かけるわけにはいかないと思った。

『こちらこそありがとうございました！
　では、音楽も楽しみにしていますね。』

杖を大きく一振りすれば、会場全体に
ハラリと小さな雪の結晶が舞い降りてくる。

感動した生徒達の拍手の中
照れながら出口まで向かった。

ふと我に帰って振り返る。

『私にしてはなかなか良い出来じゃん。』

ボソッと口に出した小さな呟きも
彼らにはしっかり拾われていた。

「何がいい出来だって？」
「まぁこれなら自画自賛しても当然だ。」

『わ！双子！』

フレッドとジョージはしっかりタキシードに身を包み
Aの肩に腕を回してきた。

「おいおい、そんな格好で踊るのか？」

「俺たちAちゃんとペアになるつもり
　だったのに、どこにも居ないから別の子とさ。」

二人のどこか憎しみを含んだような目に
Aは思わず吹き出した。

『お相手の子、選んだからには大切にするのよ。』

「「もちろんさ！」」

「だけど、」

いつも以上に真剣なフレッドの顔が耳元に近づき、
彼女にしか聞こえないように言葉を残す。

そして元のトーンに戻った二人は陽気に
会場へと入っていった。

残された彼女は一人俯き、
生徒の群れとは逆行して暗い廊下を進んでゆく。

自室に着いた頃には涙があふれていた。