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うつぶせになって読書をするAの隣に
彼は座った。


『ちょっと本借りてるよ。』



セブルスの寝室はリビング同様に
壁一面が本で埋め尽くされており、
小説や図鑑、良くも悪くも魔術書が並んでいた。



彼女はペラペラと論文集をめくる中で
あるページに吸い寄せられた。


『あれ、この名前どこかで、、、。』

「あぁ知っているであろう。
 卒業生だ。」


魔法薬に関する論文の一つに、数年前まで
教え子だった青年の名前が載っていたのだ。


『そうだそうだあの子!
 新しい薬の開発だなんて凄いわ。
 ふふ、セブルス気をつけた方がいいね。』



悪戯っぽく笑う彼女に彼は目を細くする。



「奴が我輩の首を取ろうとでも言うのか。
 100年早い。
 これっぽっちの薬など少しいじれば誰にでも
 作れる。」


ムスッとしてしまったセブルスにも彼女は動じない。

側から見れば彼は無表情。

しかし長年共に過ごす彼女にとっては
手にとるように彼の感情が読み取れる。


『分からないよ?
 来年から魔法薬学の教授は彼に!なんて
 言われる日が来るかもしれないし。』


「その時が来るとするならば
 私は喜んでこの職を手放そう。」


『ん?それはどう言う意味?』



流石にその言葉の意図を読み取れなかった彼女が
首を傾げていると、
「それより」と彼が隣に寝転がってきた。


「初めて来た家の主人の部屋で随分と悠長に
 過ごすではないか。」


『一緒に寝るのは別に初めてじゃないじゃん。
 それにここにいると何だかセブルスに
 包まれてるみたいで心地いいんだ。』



コロンと毛布を抱き込みながら寝返りを打つ彼女は
心底幸せそうに男の胸板に飛び込む。

頭を擦り寄せ目を閉じれば、
同じ石鹸の香りをまとった彼の鼓動が聞こえてくる。




ふふ、あったかいんだねやっぱり

一応私も人間なのだが



セブルスは空を掴むように手を握ると、
部屋の明かりは全て消えた。




ねぇ、このままおやすみって言ったら怒る?


言わせてたまるか、これだけ煽られておいて


そう、そうか、そうね、ねぇ、、


ん?


分かってる、よね?


んん、?



暗闇の中でも彼の表情は分かる。
どうせ片眉を上げてしらばっくれているのだろう。



初めてなの


そうじゃ無かったら我輩の気が狂う


ね、



次の言葉を発する間も与えず彼の手が顎に添えられ
深い口付けが降り注いでくる。

言葉以上にセブルスから伝わる優しさや愛情。



大切に、それでいて本能的に。

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作者名:maya.t | 作成日時:2021年3月21日 8時

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