My Lord.6 (ページ16)

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『はぁ、はぁ、』

「どうした。」

息を切らしながら魔法薬学の教室に入り
バタンと扉を閉めた。

スネイプはレポートの添削をしていた手を止めて
彼女を見た。

『やっぱりポリジュース薬の原料だけ盗まれてる。』

スネイプは眉間の皺を増やすだけだ。

「なぜそんなに息が上がっている。」

『え？って、は、
　早くセブルスに伝えようと思って。』

ふぅ、と息を吐く彼女の元へ彼は歩み寄った。

「理由はそれだけではなさそうだが？」

『あることはある。
　でもどうって事ないんだけど。』

先程言われた言葉が妙に頭から離れず
苦しげに瞼を閉じるAに、
スネイプは黙って見守るばかり。

世界は私のもの？

何を言っていたんだあの男は。

こちらの質問にもろくに答えず、
それにあれは面白がって出す話題でもない。

腕っ節の闇払いも任務以外はただのいかれ人間だ。

ただ、たったあの数口の会話で
ここまで不快にさせられるとは思わなかった。

『ふぅーー。』

心の底からため息をつき彼女は目を開けた。

『大丈夫。』

そう言うものの容易くそうかと見逃す彼ではない。

「全くそうは見えないが。」

取り繕って笑顔を見せようとしたが
引き攣る頬のせいですぐやめた。

「この忙しい私が時間を割いてまでお前の悩みを
　聞いて差し上げようとしているのだ。
　それを拒否する権利がおありですかな？」

スネイプなりの優しさなのかもしれないが、
これは自分で解釈すべき問題だと思った。

『ありがとう。
　でも本当に大丈夫だから。
　それに私も同じ人間、拒否権くらいあります。』

ローブに包まれた彼の両腕を掴み
引き下がるよう促した。

「今日は随分と上手に出るな。
　そんなに私のことが信用できないのか？」

『違うよ。
　セブルスだってあるでしょ、
　私にも打ち明けられない秘密の
　一つや二つ。』

「私のとお前のは違う。」

パッと振り払われた腕と
その言葉には流石のAも少し癪に触った。

『重みが違うかなんてどうして分かるのよ。
　私の悩みなんて取るに足らないちっぽけなもの
　だって言いたいわけ？』

「自覚がおありですかな？」

その言葉が挑発だと分かっていても
受け流せるだけの余裕が無かった。

『じゃあ最初から聞かないで。
　無駄な心配しないでください。お節介です。
　セブルスだって何だかんだ自分のこと全然
　話してくれないじゃん。
　私にだって信用ないんじゃないの？』

「貴様」