My Lord.2 (ページ34)

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『うぁぁぁあああー！！』

嬉しさと悲しさが入り混じり
Aはさらに涙を流す。

隣のコンパートメントにまで聞こえそうな
音量で泣くAにスネイプは
よりいっそう焦る。

「A、頼むから、静かに。」

『わ、わかったゴメン。』

なんとか心を落ち着けたAに、
スネイプは細長い箱を取り出して渡す。

『これは？』

「開けろ。お前にだ。」

箱を開けるとそこには腕時計が入っていた。
黒い革のベルトに銀色の文字盤。
スネイプがつけている物とどことなく似ていた。

女性物にしては飾り気のないデザインだったが
それがスネイプを思い起こさせるようで
Aはとても気に入った。

『うそ、ありがとう。
　これとっても気に入ったよ！
　今つけるね。』

Aはすぐに時計を取り出し腕につけた。

「教師になりたいだなんて、まさかお前がな。
　寝坊で遅刻でもしたら生徒に示しが
　つかないだろう。」

『そんなヘマはしないよ、この時計があれば。』

しばらくの間ニヤニヤしながら時計に見惚れていたが
ハッと思い出したかのように上に置いたトランクの
中から箱を取り出した。

『これ！私から！』

「なんだ？」

スネイプが箱を開けると、いつぞや彼の
誕生日のときに渡しそびれた羽ペンとインク壺
が現れた。

『あの、、、、
　あなたの誕生日、ちゃんと覚えてたの。
　でも私が渡す前にもっといい羽ペンを貰ってる
　ようだったから渡せなくなっちゃって、、
　今になって申し訳ないけどずっと
　お祝いしたかったの！』

「もう3年も前の話じゃないか。
　それにそんなの気にしなくていい。
　ありがとう、とても嬉しい。
　大切にする。」

『本当に行っちゃうのね。』

「あぁ。」

『絶対に手紙書いてね、死なないでね。』

「どうだかな。
　絶対なんて言葉はない。」

『無事ならいいの。』

彼はAの知らないどこかに行ってしまう。
明日死ぬかも分からないその世界に。

自分はずっと変わらずここにいるのに。

また溢れ出しそうになる涙をこらえ、
必死に笑顔を取り繕った。

『“またね”、セブルス。』

「“またな”、A。」

二人は再会を誓うかのように
別れの言葉を交わした。