My Lord.2 (ページ33)

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自室に戻って最後の荷造りを終えた。
大きなトランクを抱えながら
この部屋に別れを告げる。

思い返せば入学時は2人で過ごしていた。
それが突然親友がいなくなり、だだっ広い部屋に
一人取り残されたような気持ちでいた。

そんな気持ちを変えてくれたのはスネイプだった。
ひょんな事から話すようになり、共に勉強し
共にご飯を食べる仲にまでなった。

頑固者だしAに対して馬鹿にしたような言葉も
沢山言ってくるが、彼女が困っている時には
いつも助けてくれた。

彼と新しい呪文を習得した日には部屋に戻ってからも
ワクワクした気分が続いたし、彼がいつまでも
エバンズを追う姿を見てはショックを受け、
涙で枕を濡らす日もあったのだ。

今までの思い出に浸りつつ、次にこの部屋を
使う子が幸せな学校生活を送れるよう願った。

部屋を出て談話室に降りると、彼もちょうど
男子部屋の方から降りてきたようだった。

『あ、スネイプ君も今来たの？』

「あぁそうだ。」

『じゃ一緒に特急乗らない？』

「言われなくてもいつもそうだろ。」

『嬉しい。』

「相変わらず変な奴だ。」

これが彼と乗る最後のホグワーツ特急。

汽車がロンドンに到着すれば別々の
未来が幕を開ける。

死喰人になる彼にはもう、
今後の人生で会うことはないだろう。

汽車の座席でAは在学中の彼との
思い出が蘇り、大好きな彼と離れたくないという
想いが溢れ出し号泣してしまった。

向かいに座っていたスネイプは驚き
大丈夫か、と言いながらAの肩をさすった。

『わーん、スネイプぐんとおわがれだがら、、』

「頼むから泣くな。
　どうしていいか分からないだろ。
　手紙なら書けるとき書くから。」

『ほんど、、、、？』

「あぁ、だからもう泣くな。」

『Aって、』

「ん？」

『最後に、一度だけAって呼んで。』

スネイプは一度困ったように眉間に皺を寄せ、
呼び慣れない名に抵抗を感じつつも
口を開こうとする。

実は一度だけスネイプは無意識にAの
ことを呼んでいた。
狼になったルーピンに襲われそうになった日の
医務室で、猫の姿で眠ったふりをした彼女の
ことを名前で呼んだのだ。

そのことをAは覚えていたが、
また彼の口から自分の名を聞きたくてせがんだ。

一生で一度、最初で最後のお願いだった。

「A」

彼はまっすぐに彼女の方を向き言ってみせた。