My Lord.2 (ページ4)

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『忘れるわけないじゃん、、、。』

スリザリン寮、無駄に広い一人部屋で呟いた
言葉はすぐに宙に消えた。

ベッドに仰向けで寝転がりながら、何かこの
やるせない気持ちを落ち着けられないかと
模索していた。

『モヤモヤするわ。』

そう言い猫になったAは窓を少し開け
隙間から飛び出した。

真っ先に向かったのは例の屋敷。

到着してみると今夜はシリウスはおらず、
Aは何も考えたくなかったので
ひたすら魔法クロスワードに打ち込んだ。

しばらくして聞こえてくる足音。

咄嗟にAはアニメーガスとなり、
息を殺して誰が来るのかを見張る。

Aがいつもシリウスと使っている
小部屋ではなく、その足音はグランドピアノがある
大きな部屋へと入っていった。

一瞬廊下に見えた影はどうやら男子学生のようだ。

音を消して歩く。

部屋を覗こうとした瞬間、窓から差し込む
明るい満月の光が廊下まで差し込み目が眩む。

それと同時に物凄い唸り声とバキバキとした
音が屋敷全体にこだまする。

目をまん丸にして静止していたハチワレ猫は、
一通り音が止んで静かになると再び
恐る恐る部屋を覗く。

『！！！！』

そこで彼女が見たものは、鋭い牙に細長い手足、
薄い毛に覆われた大きな生き物。

狼人間だった。

彼らは人間を襲うと聞いていたが、アニメーガスに
なったことで人間の匂いや気配が消えているのか
まだAには気づいていないようだった。

そこで初めてシリウスの忠告を思い出す。

“ここに来るのは構わないが、
絶対に夜は来るな。”

(こういうことだったのね。)

この狼人間の姿をしている生徒は誰なのか、
なぜシリウスはこの事を知っていたのか分からない。

しかしAはいくら猫の姿をしているとはいえ
もしかしたらこの獣に
食べられてしまうのではないかと恐怖を感じ
入りかけた部屋から後ずさる。

カラカラカラン！、、、

(はっ、、、)

後ろ足が転がっていた空き缶に当たり
豪快に音を立てる。

やっちまった！と振り返り、再び前を見ると
目の前には狼人間のドアップ。

(ばれたー！！！食われる！)

クンクンクン。

奴に匂いを嗅がれる中、
Aはギュッと目を瞑る。

今までの楽しい思い出が走馬灯のように浮かび、
父、母、エリーの顔が微笑みかける。

あ、死ぬのか、と思っていると
スネイプの顔が浮かぶ。

エバンズと親しげに話す彼。