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水葬の果てに見た夢-ｻﾝｼﾞ-【OP】ページ2

身体が宙に投げ出され、重力に逆らう事なくおれは海原へと落ちていった。
しん、と冷たい海の中は心のすきまを流れるようで思わず身体を抱き寄せた。
生物のいない＿＿海王類でさえいない海中をどんどん沈んでいく。
満たされているはずだった。
あのいけ好かないクソジジイの下を離れ、海賊となってから様々な事があった。しかし、それら全て数多くの麗しきレディたちの笑顔や泣き顔の前に意味など無くなるのだ。
だと言うのにこの海のように胸のあたりが凍えるような感覚がまとわりついて離れない。
(おれは、こんな所でこんな事してる場合じゃ......)
全身に力を込めた。水をかきわけ水面へと向かう。

「そんなとこで眠るなんてタマじゃあねぇもんな」

また別のいけ好かない声が聞こえた気がしたと同時に力強く何かがおれの腕を引っ張りあげた。
ハッとして目が覚めた。ガバッと起き上がったせいでめまいに襲われる。

「おい!まだ寝てなきゃダメだぞ！」

顔を涙で濡らしすぎて水でも浴びたかのようなチョッパーがおれを押さえ、クルーを呼んだ。
バタバタと駆けつける足音。

「お!サンジ!目が覚めたのか！治って良かったなぁ!」
「治るかぁっ!」
「治ってねえよ!だからサンジから離れろ！」

いつの間にか船長の腕がおれの身体にぐるぐると巻かれていた。ルフィがナミさんにしばかれようやく腕が離れた。
その様子を聞きながら自然とあのマリモの姿を探していた。するとバチッと目が合った。
奴は案外大丈夫そうじゃねえか、とでも言いたげにニヤリと口角をあげていた。
その面を見た途端に姿を探してしまったことを後悔した。

「とにかく!サンジはもうしばらく安静にするんだぞ！」
「わかったからいい加減涙止めろよチョッパー」

船医をなだめ、その後しばらくして眠りについた。
目が覚めると部屋は真っ暗だった。ふらりと甲板へ足を向けるとそこには先客が居た。

「病人はもっと寝た方がいいんじゃねえか?」
「うるせえくそマリモ」
「おーおー、元気に吠えるようになったじゃねえかクソコック」
「ああ?三枚に卸されてえのか?」
「今日はそのくらいにしといた方がいいぜ」
「あ?何でだよ？」
「陽が昇ったら大量の飯作るんだろ。お前のせいで二日間はまともに食えてねえからな」

そんなに寝てたのかと驚いたが、深手を負って眠っていたのだから仕方ない。今から仕込みでもしておくかと立ち去ろうとした瞬間、風が吹いた。
夜明けと共に吹く新しい風が金の髪を優しく撫でていた。