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約束を結ぶもの ページ13

主人公side

「カギザ、お前の帰る家だ。お前が憑いていたやつが一番に見つけた。」

「…あぁ、本当だ。私の家だ。…人間、まさか本当に持ってきてくれるとは思わなかった。ありがとう。」

「…礼ならあいつに伝えとく。」



あのあと数分もしないうちに、その装飾がついた箪笥を見つけた。


決め手となったものは、二センチほどの金属の丸い板の上に、黒と白の鳥が描かれているものだった。

鳥はだいぶかすれていて、最初はそれが鳥だとはわからなかったが。

田沼が見つけ、それを私は確認した。

黒と白の色味は目の前にいるカギザの髪色と似ていて、ああこれだと確信を得て、ここまで運ぶに至ったのだ。



「…これ…嫁入り道具なんだって?…だからただの箪笥なのにアンタが生まれた。」

「…よく知っているな。そうだ、これはある人間の娘が嫁入りするときに選んだものだ。

なのに…旦那になった男はこの箪笥が邪魔だといって捨てようとしたんだ。

風花が、旦那との結びの証にと、一生懸命に私を彩ってくれた、この箪笥を。」



それでとうとうその男はこの箪笥のを手放し、めぐりめぐった後、田沼の家へとたどり着いたのだろう。



カギザは家を失うと、その力が弱くなるのだそうだ。

だから家を探すため、その夫婦の家から立ち去った。

愛の形の象徴として、そこに存在していた箪笥と共に。


じゃあ、それを失った夫婦はどうなったのだろうか。

つないでいた結びを失った夫婦は。




「…結婚なんて、するもんじゃないな。」

新たな繋りを作ろうとして、そのせいで何かを失ってしまうそんな契。

失ったものは取り戻すにはたくさんの犠牲が必要になる。

なら最初から何も作らない、何もしない、そのほうがずっと合理的だ。



「それは違うぞ、小娘。」



カギザにそう言われてはっとする。

それ、というのは私の考えていることなのだろう。

そこでようやく自分の考えてることが口に出ていたことに気がついた。


それからカギザは何か私に伝える。

けれどその声はなんだか遠のいていくのだ。

なにか言っているのはわかるが、何を言ってるのかは聞き取れない。

ぼんやりとした音に私はそのまま身を委ねていた。

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うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (2020年10月22日 7時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
ふりかけ旨し - なんですかこの物語。好き(( (2019年4月8日 13時) (レス) id: e39bf45103 (このIDを非表示/違反報告)
夏猫 - とっても面白かったです!とても続き楽しみです!更新頑張ってください! (2018年6月2日 13時) (レス) id: a26082a895 (このIDを非表示/違反報告)
零斗 - 面白かったです!続き、楽しみにしてます! (2018年3月24日 15時) (レス) id: 48fec663c2 (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2018年2月6日 20時

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