【夏目友人帳】油揚げを添えよう~弐~

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結婚の準備の一つに嫁入り道具というものがある。

奥さんになる人が旦那さんのお家へ贈るもので、それは鏡や洗濯機、喪服など多岐にわたる。

その中でも代表的なのは、箪笥だ。


箪笥には様々な部分に名前がある。

箪笥本体と扉をくっつける金具は『兆番。』。

３つらなんだ小さな引き出しをあわせて『並び』。

箪笥の中に入っている着物を収納する部分を『壺盆』

引き出しの近くにあるスライドさせることで鍵穴が現れる金具を『鍵座』









「…その妖は鍵座の紋様に宿るもの。思い込めて作られ、妖となったのだ。」

そこまで話し終えて、ニャンコ先生はふぅ、と一息つく。

「…案外、猫は博識なんだな。」

近衛は感心したらしく、意外にもニャンコ先生を褒める。

けれどニャンコ先生は気持ち悪い、とそれを嫌そうにした。

近衛は別に何も言い返さなかった。


「じゃあ、鍵穴は鍵穴だけど、それを隠す部分の模様を探せばいいんだな。」

「模様が『消えている』ところをな。」

田沼の言葉にそう付け足すと、ニャンコ先生はもう手伝うことはない、とそこに寝転がってしまった。

しかし、ちょうど日が落ちかけていて日向ぼっこができる部分も限られている。

そこは窓から入る光はすくなくなっていた。

なので暖かいところを探しに、ニャンコ先生は外へ出ていってしまった。



近衛はその後ろ姿を見届けてから、誰に対してでもなく、思ったことをただ口にした。

「変な猫だ。手伝う気がないと言いながらここまで付き合ってくれる。」


その言い方はなんだか棘っぽかったが、その反面、顔はなんだか嬉しそうであった。


「…鍵座、探そうか。」

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