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「A!」
若利くんと太一が追いかけてきた。
「わかとしくん…たいち…」
追いかけてきてくれる人がおった安堵と、辛くて目を背けてきた過去。
目からたくさんの涙が落ちて止まらんかった。
太一だけは、同中で、唯一の友達で、全部を話した。
若利くんは知らんだろう。何も知らんだろうけど、彼だけはずっと、過去に触れんように私をバレーに携わらせてくれた。
「侑と治を裏切ったんは、ほんまなんよ…一緒に、3人で全国行こうって約束して…」
若利くんたちに続いて烏野や他の学校の面々が集まってきて、いつもの気丈な私になろうとした。
「でも…耐えれへんかった…無理だった…いとこってだけで嫉妬してくる女子ら…私の実力に嫉妬してきたチームメイト…」
口は全く止まらん。吐き出すように。
「机にいたずらされてるんや日常茶飯事で…ひどい時はリンチで…バレへんように見えんところばっかり殴られて蹴られて…」
言葉にするたびに涙が止まらんようになる。
「学校で精神すり減らして、帰ったらいつも父ちゃんと母ちゃんが喧嘩してて…」
一番精神にきた両親の不仲を思い出して吐き気をもよおす。
「休まる場所も助けてくれる人もおらんかって…」
あの時見て見ぬ振りした顧問と担任を思い出して吐き気が加速する。
「気づいたらもう学校にも家にも逃げ場がなくて」
みんなの蒼白した顔を見渡す。
「侑と治が何気なく話しかけてくることで余計に私の逃げ場は無くなって」
駆けつけた双子がなんとも言えん顔をする。
「2年の全中でレギュラー選ばれてたけど、前日にユニフォームもシューズもギタギタに切り裂かれた」
今思い出しても胸が締め付けられるあのシーン。
「その日の帰りに母ちゃんに、離婚して宮城の実家に帰るから着いてこい言われて、迷わず着いていった。」
母ちゃんと父ちゃんの離婚の原因は、父ちゃんのギャンブル依存症と度重なる浮気だった。
「念のために双子の母ちゃんにだけ携帯の番号教えて、誰にも何も言わずに兵庫から宮城に越してきた。」
涙は止んだが気持ちはどんどん闇に沈んでいく。
「バレーから離れたけど、引っ越した先でもいじめられた。」
バレー部に入らないことにいちゃもんをつけてくる人たちを思い出す。でも。
「太一だけ気づいてくれた。太一だけそばにいてくれた。」
太一だけ。助けてくれたのは太一。
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zero(プロフ) - スガさんのこうしの漢字、誤字ってます (2021年8月1日 0時) (レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)
るかち(プロフ) - 千花さん» コメントありがとうございます!スガさんもいいですねえ…あの人も夢主を支える(過激派)ですからねえ… (2020年12月6日 6時) (レス) id: 6d1a9a4ec9 (このIDを非表示/違反報告)
千花(プロフ) - 落ちは菅原さんがいいです! (2020年12月6日 4時) (レス) id: 3f06c5551a (このIDを非表示/違反報告)
るかち(プロフ) - ライムさん» リプありがとうございます!夢主支え続ける系川西太一、絶対いいと思って書いてみたら予想以上にハマり役でした…ありがとうございます! (2020年12月5日 20時) (レス) id: 6d1a9a4ec9 (このIDを非表示/違反報告)
ライム(プロフ) - オチできたら川西くんが良いです〜。ここまで夢主ちゃんを支えてきてくれたんだから報われてほしぃ..... (2020年12月5日 20時) (レス) id: 9da108d461 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:パン田くん | 作成日時:2018年5月19日 22時