紺碧のお酒物語 〜３杯目〜

閑話休題〜お眠な兵器 ページ8

日本に帰ってすぐ、Aに連れて来られたのはとあるマンションだった
彼女曰く組織用ではないセーフハウスの内の１つ、それはいい、それはいいが…


「…なぁ、何でお前寝る準備してんの？」
『だって私の部屋だもの、時差のせいであまり寝てないの…』
「え」
『お腹が減ってたら悪いけど近くで何か買ってきて…それじゃ』
「待て待て待て」


早々に風呂へと消えていったAは小一時間したところで戻ってきてソファに沈んだ(相変わらずシャツ一枚な彼女にはもうつっこまない)

まだ昼間だがAはもうお眠らしい…ほんのりと瞳を潤ませてかわ…いやいや、違う、冷静になるんだ緑川唯


「お前何度言ったらわかんの？…いいか、俺は男、お前は女だろ？」
『見たらわかるわよ？大丈夫、ベッドは貴方にあげるわ。寝室は向こうの部屋よ』
「違うっての！あ、こら待て寝るなA！！」


今にも寝そうな彼女の肩を揺り起こす、彼女は相変わらず眠そうな危機感ゼロの眼…この野郎


「もう何なの？ちゃんとわかってないだろ…一回本気で身体に教えないと駄目か？」
『あら大胆ね…ふぁ』
「欠伸すんな！！俺のこと何だと思ってんだ！？」


思わず押し倒しそうになったその瞬間、彼女の腕がするりと首に回ってぴたりと動きを止める


『唯君のこと？ちゃんと考えてるわ』
「え？」
『優しくて背も高くて…そこそこイケメン』
「おい、余計なもんつけんな」
『それにびっくりするぐらいの紳士よ…疲れて眠い私のこと、…貴方は襲ったりしないでしょう？』
「っぐ」


間近でふわりと笑ったAの笑顔の破壊力たるやない

彼女はとても整った顔立ちだが怜悧な風貌をしている、しかも基本無表情なのでそのギャップは兵器並に凄まじい…問題はそれを多分こいつは自覚してないことだ

蹲って悶える俺を他所にさっさと寝心地の良い場所を探す彼女…やっぱり俺の負けかよ(まぁ勝てたこと無いけど)




「わかったから…もうほんとお前疲れる」
『？何よ』
「…言ったろ、俺は女をこんなとこで寝かせて平気でいられる男じゃないの」


ブランケットごと小さな身体を抱き上げた俺は寝室に向かうとベッドの上に彼女を降ろした…何かデジャブだな


『ふふ、やっぱり紳士だわ』
「言ってろ、…だが」


やられっぱなしはそろそろ飽きたんでな


『っ…』
「…大人しく寝てろよ」


頬にキスを落とすと驚いたような彼女

その顔にほんの少しの優越感…俺は口元を緩むのを隠してそっと部屋を後にしたのだった

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