白ゆり63輪 ページ13
「えー、Aはまだ子どもやろ？」
にひ、と笑いながら睨む私の頭を撫でる。それはまるで、ごめんな、とでも言ってるようだった。
「はいはい、そこまで。じゃあゾム、詳しい話は夕飯中にでも聴かせてくれる？」
「それからゾム、お前もまだ子供だからな。俺らにとっては。」
「んふふ、はーい。」
父からの言葉にゾムが嬉しそうに笑って返事する。それを見て私も少し安心する。
そう言って話を切り上げて、みんなで夕飯の準備をする。
いつも通りのことなのに、ゾムがいなくなってしまうと思うと、この瞬間も大事にしないといけないと心の片隅で感じていた。
夕飯を食べながら聞いたゾムの話をざっとまとめると、
ゾムが言うその面白い軍人の名前はグルッペン・フューラー。話がぶっ飛んでいてマジキチらしい。
そんなマジキチはだいぶ前から国家転覆を志していて、仲間を集めている。
ということらしい。
ちょっと待って。この時点でヤバイでしょ。
って思ったけど、そんな話を嬉しそうに話すゾムもまぁこういうの好きかって納得してしまった。
ゾムはそのグルッペンさんに戦闘技術を認められ軍学校に誘われた。
いや結局、しつこすぎてほぼ強制的に編入することを許可してしまった、とのこと。
軍学校への編入はそう簡単なことではないはずなのだが、そのグルッペンさんには色々伝手があるようでゾム1人を編入させることくらい何てことないらしい。
そう言って話すゾムの顔は楽しそうだった。
「そんなわけで俺国家転覆目指すことなってん。期待して見ててや。」
こんな台詞を聞くことはもう一生ないと思う。
父も母も話を聞き始めた時は驚いて戸惑っていたが、最終的にはゾムの言葉を聞いて爆笑していた。
どうかと思う。
「そうか、それは良い。俺らも一度国を裏切ってる身だからな。せめてAが安心して暮らせる国を作ってくれ。」
父はそう言ってゾムの頭を撫でた。
私にとってゾムは兄で、両親にとって本当の子どものような存在なんだろう。
その数日後。
ゾムは家を出て、中央軍事学校へ向かった。
「すぐ帰って来るわ、行ってきます！」
「『「いってらっしゃい！」』」
見送る時、不思議と寂しさはなかった。
ゾムが絶対家に帰って来るという確信があったからかもしれない。
続く (更新停止中)
お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←白ゆり62輪
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 279人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
水愛(プロフ) - 涼さん» ありがとうございます！そんなふうに言ってもらえて本当に嬉しいです！拙い文章ではありますが、楽しんでいただけるよう頑張ります。これからもよろしくお願いします！ (2020年5月21日 21時) (
レス) id: b9ec477e49 (このIDを非表示/違反報告)
涼(プロフ) - コメント失礼します。主人公の設定から、文章からもう何かも好きすぎます…天才です…！これからも、体調にお気をつけて更新頑張ってください！楽しみにしています！ (2020年5月21日 19時) (レス) id: ed6c21a40b (このIDを非表示/違反報告)
水愛(プロフ) - リウさん» 応援ありがとうございます！またかなりゆっくりな更新になると思いますが、頑張っていきます。これからもよろしくお願いします！ (2020年5月9日 0時) (レス) id: b9ec477e49 (このIDを非表示/違反報告)
リウ - いつもとても楽しく読ませて頂いています！！更新頑張ってください！陰ながら応援しています！ (2020年5月9日 0時) (レス) id: b4c88379e4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：水愛 | 作成日時：2020年5月7日 12時
