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そんな出会いのときを思い出しながら、私は目の前の彼に想いを告げようとしている。
好き、とそう言おうとしたのに、彼は私の唇に人差し指を当てた。頭によぎった不安は、彼の言葉ですぐにかき消された。
「その言葉は、私から言わせてください」
彼は、まるで王子様のように、片足を床に付け、片手で私の手をとる。そしてその手の甲にキスを落とした。
「愛しています、A。私と恋人になってはもらえませんか?」
物語のような美しい現実を、私の強い憧憬が見せる夢なのではないかと疑ってしまう。
でも、彼が触れてくれている手が、夢ではないと示してくれる。
「もちろんです、ストリウス」
「あ、ふふ、良かった」
互いに恋心に気付いていながらも、この関係を崩すのに怯えて、進展しようとしなかった。でも、今日からはストリウスが好きだと、胸を張って言えるんだ。
私の手に触れたまま、彼は立ち上がった。
「ひとつ、聞いても構いませんか?」
「ええ、もちろん」
「私のことは、好きですか?」
「...ふふ、分かっているくせに」
「貴女の言葉で、聞きたいのです」
かわいいところもあるんだな、なんて微笑みながら、私は彼へ求められたよりも大きな愛の言葉を紡いだ。
「お慕いしておりますわ、ストリウス」
「おや...かわいらしいことをしてくれますね」
表情を和らげ、嬉しそうに微笑んでくれる。けれど、その瞳には確実な熱が宿っていた。
「A」
「はい」
「あなたの唇に、キスを落とすことは許されますか?」
「...はい」
私の返事を聞くと、彼は優しく頬に触れて、ゆっくり、ゆっくりと顔を近付けた。
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悠夢(プロフ) - *桜もち。さん» ご感想ありがとうございます!お褒め頂けてとても嬉しいです……!応援の言葉までありがとうございます。自分なりに頑張りますね! (1月12日 17時) (レス) id: 5e7eb9f08a (このIDを非表示/違反報告)
*桜もち。(プロフ) - 初めまして…!主様の小説を初めて拝見させて頂きました!凄く読みやすくて素敵な文章だと思いました✨無理のないように更新頑張って下さい…! (1月10日 20時) (レス) @page44 id: fae296cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
悠夢(プロフ) - 余白のむらさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけると気持ちが楽になります…!早く帰って来れるように頑張りますね! (2022年2月6日 23時) (レス) id: 5e7eb9f08a (このIDを非表示/違反報告)
余白のむら(プロフ) - 私も他のジャンルに沼って小説がかけなくなることが多々あります……笑 悠夢さんが帰ってくるまで待っています! (2022年2月6日 21時) (レス) @page24 id: 3edb9aa810 (このIDを非表示/違反報告)
悠夢(プロフ) - 稜雅さん» 初めまして。ご感想とリクエスト、ありがとうございます!お楽しみいただけているようで良かったです!センさんのお話かしこまりました。 (2022年1月23日 10時) (レス) id: 5e7eb9f08a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠夢 | 作成日時:2021年12月19日 8時