君といると ページ8
(鶴崎SIDE)
久しぶりにに会った知香は、外見が別人のようになっていた。
乱れ一つない黒髪をまっすぐに伸ばし、
青いメガネはコンタクトレンズに、
小麦色の肌は真新しい画用紙の様に汚(けが)れなく白くなっていた。
以前から顔は整っていたから、おとぎ話の様に、かぐや姫だ、白雪姫だと騒がれていたに違いない。
――――それらを書き消すほどの雨に打たれていなければ。
あの時の光を失ったような虚ろな瞳。『あれ』は、知香であって知香じゃない。
純粋で、いつも遠くを見て、どんな時でも微笑んでいた知香じゃない。あの瞳は、あの姿は――――。
「・・・る?つる?」
ああ、いつもの知香だ。羽毛のようなその声がくすぐったい。
「ん、なに?」
「もしかして・・・疲れてる?なんか、すごくボーっとしてるよ。ココアが冷めちゃう。」
「あ、ごめん。ちょっと考え事してただけだから。大丈夫だよ。」
「えっ、何?新しいパズル?」
「アハハ、本当に知香はパズルが好きだねえ。」
「つるは嫌いなの?」
「うーん、そうじゃないんだけど、計算問題がもっと好きだな。トランプで作ったタワーとか。」
「昔から得意だったね。そういうの。・・・あっ、このココアおいしい。」
「自分で入れて言う?それ。」
「だって本当なんだもん。」
そう言う彼女が入れてくれたココアは、確かに美味しかった。
「どう?美味しい?」
「うん、とっても。おかわり、ある?」
「あっ、気に入ってくれた?」
嬉しそうにもう一杯入れに行く彼女は、スプーンを片手に、「つると一緒にいると、安心するなあ・・・」と呟いた。
・・・喜ぶべきなんだろうか。察するに僕は、彼女に『男』として見られていない。
まあ、一緒にいた頃があまりにも情けなかったから、しょうがない、かもしれないけれど。
「・・・そうなの?」
僕がおそるおそる訊き返すと、彼女は僕が知っている笑みを浮かべて、どこか哀しそうに答えた。
「うん。一緒にいたらほっとするし、嫌なことも全部忘れられそう。今日の水上さんとの事とか。」
ココアをテーブルにことり、と置いて、彼女はソファに座る。
「水上さん?」
そう訊き返すと、彼女は「しまった!」という顔をした。
「・・・ごめん、なんでもないから。」
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mathgirl - (下記の続き)流石に限界らしく、ここに来るのは難しいそうです。私もこの作品を読んでいたことを知っていたのか、前触れもなくこんな状態になってすまない、と言っていました。多分、この作品は更新できないと思います。急なお知らせですみません。 (2017年12月16日 15時) (レス) id: d1012bafe4 (このIDを非表示/違反報告)
mathgirl - すみません、Ariceの妹です。個人のスマホを持っていないので、姉と同じIDになっています。姉は受験生ではないのですが、最近部活に忙しく、志望校に行くための勉強や、資格の取得でどうしてもこちらへ来れないそうです。テスト前までは粘っていたようですが・・・ (2017年12月16日 15時) (レス) id: d1012bafe4 (このIDを非表示/違反報告)
Arice - 良いですよね!彼ならドラえもんにも勝てるんじゃないか?と思えるくらい強いし・・・私は、好きなキャラは決められませんが、卓也さんを見ていて、いつも笑っちゃいます(笑)。 (2017年11月26日 12時) (レス) id: d1012bafe4 (このIDを非表示/違反報告)
月読命 - Ariceさん» 内人です!一番の苦労人(とかいてドラえもんと読む)って感じがするので・・・! (2017年11月26日 11時) (レス) id: 3990fcd378 (このIDを非表示/違反報告)
Arice - 分かります!私も大好きなんです!時が進む事に、どんどん壊れていく創也の観察日記を書きたい(笑)。月読命さん、都会トムで気に入ってる登場人物とかっていますか? (2017年11月26日 10時) (レス) id: d1012bafe4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Arice | 作成日時:2017年10月13日 20時