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それからライブは順調に進み
遂にAの初舞台となるアンコール
一旦舞台袖へと避けると衣装を
海人がデザインしたツアーTシャツに着替え
俺の歌からシンデレラガールが始まった
初めの間奏では神が
新メンバーが登場することを伝えると
客席から悲鳴混じりのどよめきが上がり
それでも予定通りにAを呼び込むと
彼女は笑顔で手を振りながらステージへと
初めの一歩を踏み出した
やがて岸くんのソロが始まり
俺たちも花道を歩きながら
ファンサをするけれど
彼女が現れた動揺で中には不安そうにして
ライブを楽しめていない人も居た
そんなファンの人への申し訳ない気持ち
でも…彼女の歌を聴けば
きっと何かが変わる
だって俺もAの歌を初めて聴いた時
言葉にはしなかったけれど
本当は衝撃を受けたんだから
だから…きっと…
そして彼女のソロパートが近づく
まだ不安そうにしているファンの人たちに
少しでも安心して貰おうと
俺は笑顔で手を振り続けた
だけど…
彼女の歌は会場に聴こえて来ることがなく
代わりに慌てたような岸くんの歌声が聴こえた
Aが歌割りを忘れて岸くんが
代わりに歌ってくれたんだと思った俺は
反対側に居る彼女へと振り返った
でも…そこには
彼女の後ろを歩いているはずの廉が
Aの体を庇うように抱える姿や
ステージの下をスタッフが走る姿
何かがおかしい…
俺が直ぐに二人の元へと駆け寄ると
唖然として視線を落とすAの代わりに
廉が何があったかを教えてくれた
廉「……多分、水風船に墨汁を入れて
客席から投げられたんやと思う」
紫「………水風船？」
今日の為に作られた白いツアーTシャツ
それは俺たちと同じだったはずなのに
AのTシャツには
真っ黒な染みが出来ていて
足元には風船のカラフルな破片が落ちている
見たところ彼女に怪我は無い
だけど、これは間違いなく
Aに対しての批判が形になったものだった
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作者名：莉衣子
| 作成日時：2023年4月20日 14時
