君と出逢えた奇跡【1】 (ページ3)

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日「その借金は私が払おう」

　『……何を言ってるんですか？』

日「君には才能がある
　今の事務所には君が必要だ」

私は…詐欺にでも遭ってしまうのか？

たった一度歌を聴いただけで
一千万円の借金を払うと言うの？

　『揶揄わないで下さい
　それともタチの悪い悪戯なら
　お店から出て行って貰いますよ』

私が警戒して冷たく視線を向けると
日下部さんは飄々として笑っている

日「だったら先に借金を払えば信じてくれる？
　明日の正午までに君の肩の荷を
　全部取っ払ってあげるよ」
　

　『………一千万ですよ？』

日「構わない
　それから返事をしてくれないか？」

　『……どうして…そこまで？』

日「君の力が必要だからだよ
　じゃあ、連絡を待っているね」

カウンターに置かれた名刺を指で示すと
日下部さんはすぐに店を立ち去った

…借金が無くなって歌手になれる？

そんなにも上手い話がある訳がない
疑心暗鬼どころか
完全に信用をしていなかったけれど

翌日の正午過ぎに
母親が借金をしていた金融会社から
完済の連絡が来たことで
私は慌てて日下部さんがくれた名刺を確認する

そして、そこに書かれている事務所の名前に
また驚かされたけれど
私は日下部さんの言葉に掛けてみたくなった

　『……私が必要って本当ですか？』

日「ああ、私に力を貸してくれないか？」

　『…………はい、宜しくお願いします』

電話を掛けたその日にスナックを辞め
私は日下部さんの元へと向かった

だけど…私を事務所に入れたいのは
社長の日下部さんだけで
他の役員や社員の方たちの反対は大きかった

それなのに日下部さんは
社員を納得させるまで必死に戦ってくれ
許可が出るまではダンスレッスンや
歌のレッスンに通わせてくれた

私の為に頭を下げてくれる日下部さん
彼への信頼は日に日に強くなり
その期待に少しでも応えたいと思った私は
レッスンに明け暮れ技術を磨く

でも…私は知らなかったんだ…

この頃、日下部さんの体が
大変な病に侵されているということを…

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