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柏木さんが話しくれた話は…
出産を望んでいた母は柏木さんの家で過ごした
大好きな人からの最後のプレゼントだと
お腹の子を大切に想う母を見て
柏木さんは母の出産を応援していたらしい
だけど…安定期を迎える前に
母にまた悲劇が待ち受ける
それは母に病気が見つかったこと…
進行性の病で
当時、私と同じ歳だった母は
若いから進行が早く医師に妊娠を中断して
病気の治療に専念するように
勧められたけれど
それでも母は絶対に産むんだと
妊娠を諦めることを拒否したんだ
このままでは母の命が危ない
さすがに出産を応援することが出来ないと
柏木さんは母に子供を諦めるように説得した
でも何度話し合っても産むの一点張りで
ついに母は柏木さんの家も飛び出す
連絡も取れず、心当たりを探したけれど
結局、母を見つけることは出来なかったんだ
柏「ここからは…病院と
それから警察から聞いた話です」
『………』
紫「………はい」
半年ほどが過ぎた頃
柏木さんの元へ警察から連絡が来た
名古屋の病院で亡くなったのが
母かもしれないから確認して欲しいと…
母は飛び込み出産というもので
病気を隠して出産をしたらしい
そして…母は退院を待たずに
赤ちゃんを連れて病院から居なくなったんだ
柏「街中で倒れて搬送された時には
赤ちゃんを連れては居なくて
その子の行方は誰も分からなかった」
紫「退院して自分が倒れてしまう前に
施設の前に置いて行ったんですね」
柏「もしかしたら本人も
自分が死んでしまうなんて
思っていなかったんじゃないかしら
病気を治して迎えに行くつもりで
あなたにネックレスを
残したのかもしれないと私は思うの」
…私を産む為に
母は病気の治療をしなかった
悪化する病を自らの体で感じながら
たった一人でお腹の中の命を守ることは
どれほど不安だっただろう…
計り知れない想いを知り
いつまでも言葉は出て来なくて
代わりに涙が止めどなく溢れて来た
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作者名：莉衣子
| 作成日時：2022年7月4日 22時
