◇ ページ6
.
苦い…
分かってはいたけれど
それは苦味と僅かな酸味
大人ぶりたいはずなのに
やっぱり苦手だなと
ただ思い知らされただけだった
海「ねぇ、先生？
本当はブラックが苦手でしょ？」
『…そんなことないよ』
海「嘘、ここにしわが寄ってるよ」
海人くんは私の眉間の辺りを
指先でツンと触れた
思わず触れられた場所を手で隠すと
その間にもう一方の手からカップが奪われた
海「はい、交換」
『……ありがとう』
知らなかった…映画館の席って
こんなにも近いんだ
いつも見ている彼の笑顔が
あまりにも近くて直視出来ない…
海「あ！始まるよ」
『…うん』
だから私は映画が始まって
海人くんがスクリーンに夢中になっている間に
彼の横顔をこっそりと見ていた
グラスの外の世界は
こんなにも心臓が忙しくなって
何もかもが輝いているんだね
その全てに海人くんが居て
私に幸せを分け与えてくれているみたいだ
.
海「この映画、良かったね」
『うん、そうだね』
本当はね…映画の内容なんて
あまり頭に入って来なかったんだよ
肩が触れそうな距離にあなたが居て
私の心臓は100メートル走をしたみたいに
煩く高鳴っていた
だから隣の海人くんに
聞こえてるんじゃないかと思ったら
気になって映画を見ていられなかった
海「受験が終わったら
また一緒に出掛けようね」
『…うん』
海「今日はありがとう
また明日、保健室でね」
『また明日』
車を降りてから
手を振って帰ってしまう彼の姿を見て
また胸が痛くなる
でも…この感情はなんとなく分かる
きっとこれは寂しいから…
だけど大丈夫だよ
だってまた明日、保健室で会える
いつものように海人くんの豆知識を聞いて
また彼の笑顔を見られるんだから
そう思っていたのに…
私たちに��また明日"…は、無かったんだ…
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 790人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
莉衣子(プロフ) - しおりさん» 泣いてもらえるなんて嬉しいです！短編集の紫耀くんは幸せな話が少なかったので最後はハッピーエンドに出来て良かったです！ (2021年3月31日 8時) (
レス) id: b19a23a34c (このIDを非表示/違反報告)
莉衣子(プロフ) - こあさん» ありがとうございます！個人的に短編集が難しかったから、そう言ってもらえて嬉しいです。書き始めて良かったです！！ (2021年3月31日 8時) (レス) id: b19a23a34c (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 最後のラブレターのお話で、短編だったのに見事に泣いちゃいました、、、主人公ちゃんと平野が幸せになって良かった、、、 (2021年3月31日 0時) (レス) id: 199b427b1e (このIDを非表示/違反報告)
こあ(プロフ) - 完結、おめでとうございます。莉衣子さんの短編集どの話も大好きです。最後の２つも最高でした！！！ (2021年3月30日 23時) (レス) id: f6c76a4ec8 (このIDを非表示/違反報告)
莉衣子(プロフ) - かいとんさん» かいとんさん、コメントありがとうございます。そしてリクエストもありがとうございました！海ちゃん褒められるのホンマ嬉しい、短編集じゃなく一つのタイトルでまた海ちゃん書きますね！玄樹くんのことは朝起きても悲しみは消えませんが彼の幸せを祈りたいです。 (2021年3月30日 8時) (レス) id: b19a23a34c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：莉衣子
| 作成日時：2021年1月6日 8時
