29 夏花火 ページ29
Aside
海人を見送る時にこんなことを言われたんだ
海「姉ちゃんは自分の気持ちを信じろ」
…やっぱり海人は鋭いな
全部分かっちゃったんだろな…私の気持ち
.
いつものように野菜の皮をむきながら
紫耀さんに海で触れた感覚や
抱っこされながら見た横顔を思い出しては
胸の中が締め付けられるように痛くなる
あれから紫耀さんとは
仕事以外でほとんど話をしていない
それなのに彼への好きが
大きく育って行くのはどうしてなんだろう…
料「皮むきも上達して来たな」
『料理長、ありがとうございます』
裏口を出たところで皮むきをしていた私に
料理長はお茶を持って来てくれた
残暑の厳しい日差しの中
冷たいお茶が体の熱を冷ましてくれる
料「安心して辞めれそうだな」
『…え？料理長、辞められるんですか？』
料「もうすぐ定年退職なんだよ」
『そうだったんですか、寂しいですね』
料「ありがとう、でもここには
平野が居るから大丈夫だろう」
『平野さんが料理長になるんですか？』
料「美月さんと結婚して
平野が料理長になるという噂があるよ」
『……え？』
料「じゃあ皮むき頑張ってな」
『……はい』
裏口が閉まる音がした
私はジャガイモを手に取ると
また包丁を這わせてスルスルと皮を剥く
スルスルと…
軽快に…
『………痛』
気が付けば手が震えていて
親指からは血が出ていた
彗星の如く現れた結婚という２文字
年上が好きと言った紫耀さんの頭の中には
美月さんが浮かんでたのかな…
好きなタイプじゃなくて
好きな人…だったのかな…
ダメだよ、まだ仕事中だ…泣かない…
痛いのはこの親指だけ…
頭に残る料理長の言葉をかき消すように
私は震える手でひたすらに
野菜を剥き続けていたんだ
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1140人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「平野紫耀」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
莉衣子(プロフ) - sugarさん» いつもの雰囲気とは違う紫耀くんをお気に召して貰えて良かったです！紫耀くんは笑顔も素敵ですが無表情のクールな顔も格好良いですよね😆 (7月23日 22時) (
レス) id: b19a23a34c (このIDを非表示/違反報告)
sugar(プロフ) - このストーリー好きです〜♡いつも好きなものばかりで、好きが上書きされてますが、無口で無愛想な紫耀くん、くすぐられまくりでした！もう１回読もうっと！ (7月21日 11時) (レス) @page50 id: 6fcf1f20df (このIDを非表示/違反報告)
莉衣子(プロフ) - ジミカさん» 食べ物粗末にするんじゃねぇって怒られるかと思ったから笑って貰えて良かったです！ (2020年11月28日 11時) (レス) id: b19a23a34c (このIDを非表示/違反報告)
ジミカ(プロフ) - ヤバwww廉がネギで殴ったの笑ったwww最高です！ (2020年11月28日 0時) (レス) id: ac8e2dc521 (このIDを非表示/違反報告)
莉衣子(プロフ) - ミカさん» なんて素敵なコメント！ミカさんのコメント読んで幸せいっぱいです。こちらこそありがとうございました。 (2020年11月8日 9時) (レス) id: b19a23a34c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：莉衣子
| 作成日時：2020年10月24日 23時
