未完成な私たちは (ページ20)

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20 笑顔の理由ページ20

Aside

姉の誕生日に出来た顔の痣が消えるまで
学校を休んでいた

海人から何度も
心配のメッセージが届いていたけれど
お腹が痛いなど理由をつけて誤魔化していた

　

だけど…誤魔化していたのは
休んでいる理由だけじゃないかもしれない

きっと海人へ感じる想いも
気のせいだと誤魔化しているんだ

優太くんから離れられない私には
こんな感情は苦しいだけ…

…それなのに…どうしてだろう

近所のコンビニに向かっていたはずなのに
何故、私はそれよりも遠い
海人がバイトをするコンビニに
向かってしまってるんだろう

…少しだけ海人の顔が見たい

顔の痣も黄色に変わり
見えにくくなっているから大丈夫

遠くから少しだけ…少しだけ見るだけ…

駐車場の隅からコンビニの中を覗く
だけど、そこには
おじさんの店員さんがレジに立っている

もしかして今日は休みだったのかな…

そんな現実に想像していたよりも
気を落としている自分に気付くと
別の方向から名前を呼ばれた

海「A？」

驚きを隠して声の方へ振り返ると
コンビニの裏側から現れたらしい海人が
箒とちりとりを持って立っている

　『…あの…』

海「…A」

海人の足が一歩こちらに踏み出したら
私は後ろに向かって走り出した

何で走ってるんだろう
何で逃げてるんだろう
私は海人に会いたかったはずなのに

だけど私の全力疾走も虚しく
あっさりと海人に腕を掴まれていた

海「待って、何で逃げるの？」

　『…逃げてない、走りたかっただけ』

海「その言い訳は無理あるよ」

　『…トイレに行きたくて…走った』

海「A、こっち見て」

顔を隠して俯いていた私の顔を
海人は両手で挟むと強引に上を向かせた

海人の大きな目が見ているのは
私の黄色くなった痣のある口元だった

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