未完成な私たちは (ページ18)

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岸side

怒りと体の熱を吐き出し切ると
やっと我に返った

目の前には裸のままで意識を失くす香澄の妹
体や顔に付いた痣を見て
またやってしまったんだと理解する

…この子が香澄じゃないことなんて
本当は分かっているんだ

だけど…この子に
お姉ちゃんの代わりになると言われた時

あの日の自分への苛立ち
香澄が裏切っていたことへの苛立ちに
体中が埋め尽くされてしまって
香澄に出来なかったことを
この子にして自分を保っていたんだ…

.

香澄が亡くなる前日
俺たちは喧嘩をしてしまった

翌日から友達と旅行に行くと
言っていた香澄に俺は聞いたんだ

岸「友達と旅行に行くのは明日からだよな
　気をつけて行ってこいよ」

香「ねぇ、誰と行くとか気にならないの？」

岸「…だって友達だろ？」

香「男かもしれないでしょ」

岸「俺は香澄を信じてるから」

大学時代から皆の人気者で
高嶺の花だった香澄に一目惚れをして
何度もアプローチしてやっと付き合えた

婚約まで出来た時は
まさかって正直信じられないくらいで

嬉しくて、手離したくなくて
我儘も全部聞いてあげていたんだ

香「もっと嫉妬してよ、怒りなよ！」

岸「…どうしたんだよ？」

香「優しすぎるんだよ、優太は」

岸「俺は香澄が大切だから…」

香「本当は優しく抱かれるの好きじゃないの
　激しく愛情をぶつけて欲しいの」

岸「…分かったから
　次から努力するからさ」

香「努力って何よ
　努力しないと私を愛せないの？」

岸「違うから、愛してるよ」

香「嘘つき、私のこと愛してないんでしょ？
　私、男の人と旅行に行くから！」

この言葉の後、彼女は怒って出て行った

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