未完成な私たちは (ページ14)

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その日も夜になって優太くんが来た
今日はお酒も飲んでなくて穏やかだ

私がお茶の準備をしていると
優太くんが私の腰に
手を回してくっついて来る

こんな優太くんは珍しい

岸「今度の誕生日は何が欲しい？」

　『…え？…えっと』

誕生日…それは私のでは無く姉の誕生日だ

こんな時、姉は何と答えるんだろう…

去年は確か優太くんは何も聞かずに
バッグを買って来てくれたんだ

　『あなたが居れば何も要らないよ』

岸「…何だよ、それ
　お前はそんなこと言うやつじゃないだろ」

　『……じゃあ、ネックレス』

岸「……香澄は…金属アレルギーだろ」

　『……え？』

金属アレルギーだったなんて…知らない

姉のそんなことすら私は知らなかったんだ…

墓穴を掘ってしまったことに
動揺していると
腰にあった優太くんの右手が
私のお腹、胸へとなぞるように上がって来る

だけど…その大きな手は
私の首元まで進むと爪を立てるように
ゆっくりと力を込め始める

それは喉が詰まるように苦しくて
増してゆく痛みに
慌てて優太くんの手を強く叩いた

すると、すぐに彼は力を緩めてくれた

岸「…ごめん、痛かった？」

　『…大丈夫だよ』

岸「お願い…居なくならないで」

　『私は…側にいるよ』

後ろに居る彼に向かい合い
涙を含んだ優太くんの瞳が見えたと思ったら
噛み付きながらキスをされる

どこから出ているのか分からないけど
血の味が口の中に広がった

姉になりきれなかった私が憎くて
このまま舌を噛み千切られるんじゃないか…
そう思ってしまうようなキスだった

今まで、どんなに殴られたって
彼の側に居たいと思っていた

でも、この日は初めて首を絞められ
優太くんに恐怖を感じたんだ

岸「お茶じゃなくてビールにして」

　『……うん』

この後もまた姉の名前を呼ばれ続け
私は優太くんに抱かれていた

もしかしたら
私は殺されるかもしれないという
迫り来る恐怖と共に…

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