雪男の色恋ごと 2 (ページ9)

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黒橙ページ9

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甘い、

口の中に広がる甘ったるい感覚

それに少しの不快感を抱きながら

それは、俺の喉を通って消えていく

「康二、」

なんて声をかければいいのかなんて
分からないし

多分帰ってくる言葉もない

空虚感だけが俺の心を掴んで離してくれない

「ごめんって、」

目の前の康二は今にも消えてしまいそう

「康二…」

伸ばした手は音を立てて振り払われる

触れることも許さない、か

「……消えてや、俺の前から」

涙を堪えて睨んでくる顔も

俺には全てが愛おしいよ

何度振り払われようと
俺はお前から離れたりしないよ

お前だってそうでしょ？

「好きだよ」

簡単に口から放たれるその言葉は

康二には届かないのか

触れることなく消えていった

「なんで、蓮なんやろうな」

後悔にも、苦しさにも

似たような顔で俺を見上げている

「知らないよ、好きだからだよ」

今度こそ離れないように
強く、強く抱きしめる

「次は、無いで…」

そっと背中に回される腕

康二の首筋に顔を埋めると
甘い匂いが鼻を掠めた

甘い、

甘ったるい

そんなところも好きだよ。

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