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『工藤先生…。』
先生は私が持っている本を見て、瞬時に状況を理解したようだった。
あっと声を出してから、ごめんと言って苦笑いした。
「本返しに来てくれた感じ?ごめん、入りづらかったか、、」
軽口を叩くでもなく、変に誤魔化すでもなく、
申し訳なさそうに謝る先生がなんだか可笑しかった。
「てか、もう読めたの!?」
こくん、と頷くと、工藤先生の顔が明るくなる。
『複雑な心情の変化とか、そんなことは考えても分からなかったんですけど、、、』
私が話す言葉に、先生は頷きながら耳を傾けてくれる。
それが嬉しくて、私は思うままに言葉を並べた。
『工藤先生はこのシーンが好きなのかな、とか
工藤先生はどう解釈されてるのかな、とか。
先生のことを考えながら読むのが楽しかったです。』
言い終わってハッとする。
私は何を言っているんだ。
我に返って、言い訳を考えるが
それより先に工藤先生が口を開いた。
「なんだそれ(笑)すっげぇ恥ずかしい。」
あはは、と笑う工藤先生につられて私も微笑む。
「Aさ、国語苦手とか言っといて人をたらすのは上手いな(笑)」
今度は少し意地悪に言う。
『それはこっちの台詞です。』
先生の黒い瞳に、頬を赤く染めた私が映っているような気がした。
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作者名:七葉 | 作成日時:2019年5月6日 0時