episode6 ページ6
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｢お、お待たせしました。｣
『大丈夫ですよ〜！ﾆｺｯ』
２回目の笑顔を向けられた時には、
もうすでに、
彼の虜になっていた。
ハンコを押す手は震え、
止めたくても、
彼を見ると、
さらに震えるばかりで止まらない。
彼は、
そんな緊張しなくていいんですよ〜って、
優しく微笑んでくれたけど、
そんな簡単に震えはおさまらなかった。
･
『これは保管してくださいね〜。』
｢は、はい。｣
･
私は、
大毅のことを忘れて、
彼に夢中になっていた。
やっとのことで一連の作業を終えると、
彼は、
書類と一緒に箱を渡してきた。
『これでOKです！
こちらお荷物になります。』
差出人は、
大毅の会社の人だった。
はっと我に帰る。
ﾞ大毅ﾞという文字が
頭の中にぽつんと残った。
･
私、
一瞬でも、
貴方のことを忘れて、
名も知らない彼のことを
考えてしまった。
･
『あの、本当に大丈夫ですか？』
｢っ……｣
気がつけば、
泣いていた。
『…安心してください。』
その声が聞こえた時には、
もう遅かった。
彼に抱きしめられ、
同時に、
ｶﾞﾁｬﾘと扉が閉まった。
｢すみませっ…｣
『ええんです。構いません。』
彼は、
涙が止まるまで、
ずっと抱きしめてくれた。
私は、
彼の優しさに、
甘えた。
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作者名：かずな | 作成日時：2016年2月14日 22時
