運命なんてありません。 (ページ5)

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「他人」ページ5

松村side

松村 )樹、どうしちゃったの…？

田中 )えっと…

名前を呼んでも、話しかけてもまるで他人のようだった。

違う。

樹からしたら俺は他人。
急にどうして？
俺が居ない1年で樹に何が起こったの？

ジェシーは気まずそうに俺から視線を逸らし、慎太郎も困ったように首を横に振っていた。

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森本 )北斗、ちょっといい？

お昼休みに入ると慎太郎が話しかけてきた。

森本 )信じて貰えないかもしれないけど、樹は北斗のこと覚えてないんだ…。

松村 )どういうこと？

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高校1年が終わり春休みが始まってすぐの頃。

喧嘩が日常茶飯事だった俺たちは毎日飽きもせずに、他校と争いあっていた。

田中 )今日も余裕だったわ。

ジェシー )けど最近狙われてる感じしない？

俺ら4人はそこそこ強くて、人数差も多少なら余裕だった。
だからこそ人数を集めて襲ってくる奴らも居たし、時に武器を使おうとする奴も居た。

松村 )いつになったら終わるんだろ…

4人の中で唯一喧嘩嫌いだったのは俺。
自分で言うのも何だけど弱い訳では無かったし、負けたくない訳でもなかった。
ただ、傷をつけて帰ってくる樹を見たくなかっただけ。

田中 )北斗は俺が守ってやるから安心しろって。

松村 )…樹、

田中 )わり、俺ら2人この後抜けるわ。

事件はこの直後に起きた。

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森本 )俺とジェシーが2人に会ったのは病院だった。何があったのか知りたいのは俺らも同じなんだよ。

何も言葉が出てこなかった。

あの日俺と樹が2人きりになんてならなかったら、こんな事は起きなかったのかもしれない。

森本 )北斗は眠り続けて、樹は直ぐに目を覚ましたのに北斗の事だけを覚えてなかった。

松村 )ごめん。

森本 )これから北斗はどうしたい？俺は全部樹に思い出して欲しいんだよね。って事で、今から樹達の所行くよ？着いてきて！

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相変わらず突拍子も無い慎太郎に腕を引かれ着いたのは屋上だった。

森本 )お待たせ〜、遅くなってごめんね？

松村 )…無理だよ、

慎太郎はいいから〜なんて呑気に俺の腕を引き樹達の方まで連れて行った。

いや、連れていこうとしたの方が正しいのかもしれない。

田中 )…触んな。

顔を上げると眉間に皺を寄せた樹が立っていて俺の腕を掴んでいる慎太郎の手を勢いよく振りほどいたかと思えば、気付いたら俺は樹の腕の中に抱き締められていた。