運命なんてありません。 (ページ1)

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第1章「寂しさ」ページ1

田中side

？ )じゅり君かっこいいね。

またこの夢か。

？ )ほくちゃんは可愛いよ…？

？ )じゅり君けっこんしよ？

？ )ほくちゃんとけっこんする！

小さな子供が公園の砂場でお城を作りながら結婚の約束をする。
だけどモヤがかかって子供達の顔は全く見えない。

恐らくじゅり君は俺だろう。

なら“ほくちゃん”って誰？

.

？ )〜…り、…きろ、樹、起きろって！

田中 )おわっ、！

森本 )もう授業終わったよ。

慎太郎の言葉に時計を確認すればHRまで終わっていた。

ジェシー )可愛い大我ちゃんが樹起きたら職員室来いって言ってたよ？

それは不味い。
大我ちゃんこと俺らのクラスの担任京本大我はとても綺麗でその辺の女よりは、余裕に美人だ。
初めて見た時は女かと思った程だった。

だけど・・・

.

職員室に入り京本のデスクまで走れば

田中 )すみませんでした！

大きな声で頭を下げた。

実は喧嘩がめちゃくちゃ強い。
もちろん教師と生徒だし俺らが殴られることは先ず無いけど、怒らせたらどうなるか分からない。

京本 )え？何で？

田中 )ジェシーが大我ちゃんが呼んでるよって。

京本 )ふは、違う違う。明日から転校生が来るらしいんだけど昔の住所が樹の家とめちゃくちゃ近くて顔見知りかなと思って。

田中 )いや、俺そんなに知り合い多い訳じゃないし…

京本 )“松村北斗”君っていうんだけど知らない？もし知ってたらお願いがあって…

松村北斗。

頭の中で再生してみたけど全く思い当たる名前では無い。そもそもこの辺は人数があまり多くないから小学校から高校まではメンバーが基本変わらない。

ただその名前を聞いた後、京本の声も耳に届かないくらい頭の中ではあの夢が何度もループし続けていた。

.

森本 )反省文でも書いたの(笑)

田中 )いや、何か転校生が来るらしいんだよね。松村北斗っていうんだけど知り合いじゃないかって聞かれてさ？俺知らないけど慎太郎知ってる？

森本 )…いや、俺は知らないかな？

ジェシー )樹は誰とでも仲良くなれるし、一緒に来てあげてとか頼みたかったんじゃない？

田中 )…お前ら俺の目見て話せ。

2人とも小学校からの付き合いでずっと見ているから分かる。
一瞬言葉に詰まった慎太郎と、顔を伏せ気味で視線を合わせようとしないジェシー。

俺に何かを隠してる。

だけど今までそんな事にも気付けなかった事が何よりも寂しかった。