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「彼の存在」 ページ9

松村side


大我は強引すぎて今は家でも休めない。
隙を見せたら直ぐにでも抱き締められたり、首筋を舐められたり…。

大我が俺の家に来たあの日もそうだった。


.


俺はあんなに突然の展開を拒否せずに、まんまと空き部屋を大我に譲った。

夜ご飯を食べた後大我はまた他のドラマもあるらしくセリフを覚えに部屋に戻った。

その間に俺は先にお風呂に入ったら、何故か大我が入ってきた。


京本 )お風呂行くなら声かけてよ、俺も一緒に入りたいし。



…有り得ない。
お互い腰にバスタオルを巻いてるとはいえ目のやり場に困り、俺は顔を背けた。


京本 )照れてるんだ、可愛い。


そんな言葉と同時に大我は俺の首筋に舌を這わせてきた。


松村 )っ…!

京本 )…北斗、そんな反応しないでよ。


体が強ばったのが自分でも分かり、大我から距離を取りそこに居る綺麗な顔を眺めた。自分がどんな顔をしているのか分からないけど、そう言った大我は傷ついたような顔をしているように思った。


松村 )きょ、もとさん、俺…

京本 )大我って呼んで。ご飯食べてた時からずっと思ってたけど、大我って呼んで。

松村 )たいが。

京本 )…ごめん、俺余裕無いみたい。北斗の事本当に好きなんだ。怖がらせたい訳じゃないのに傷つけたい訳じゃないのに。お願いだから、他の誰かに取られないで…?


俺はそんな大我の表情や言葉に声が出なかった。

どうして大我がそんな顔をするのか、それとも全て演技なのか俺は分からなくて怖くて先に風呂から出た。


.


映画の公開日が明日ということで主演である大我や監督のジェシーさん達、関係者さんは先に鑑賞するんだけど大我に頼まれて俺もそこに参加した。

映画は少し歪な形ではあるが人それぞれの愛のカタチが描かれていて、大我の演技から目が離せなかった。


ジェシー )北斗は見た目もオーラも全て完璧だけどな。何が北斗をそんなふうにしてるんだろうね…?


鑑賞終わりにスカウトと言われたジェシー監督から発せられた言葉に、思い出した彼の顔。

俺はまるで全てを見透かされているかのようなそんな恐怖とまだ俺の中に居た彼の存在から逃げたくて、映画館を飛び出した。


京本 )北斗…?

松村 )あ、俺…

京本 )ごめんね、俺の気持ちだけで北斗を振り回して巻き込んで。


大我の顔は見なくてもわかる。
あの日お風呂で見た時と同じ、傷付いた顔をしているのだろう。

もう誰も俺の為に泣かないで欲しいだけなのに。

第3章「犠牲」→←「色」



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のと。(プロフ) - uikeさん» コメントありがとうございます!ご期待に添えるようにこれからも頑張ります!! (5月25日 11時) (レス) id: 245ee32d81 (このIDを非表示/違反報告)
uike(プロフ) - 続き楽しみに待ってます!!私好みですごく面白かったです! (5月22日 20時) (レス) id: 661aaf06b2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:のと。 | 作成日時:2023年5月17日 10時

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