片思い２ (ページ5)

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５５◇羽生くん視点ページ5

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『あ、よかった。結弦？今電話大丈夫？』

「ああ、うん。で、何…？」

『……なんか。冷たいね、その言い方』

意識してそうしたわけじゃない。
下降していく気分の中、無意識に出た言葉だった。

「ごめん」

『…いいよ。こっちこそ殴ったりして、ごめん。あんなのサイテーだって反省してる。
あのさ…もう一度会えないかな？
なんか、何が駄目だったのかなって、まだ納得できなくて』

「先に進めない」そう控えめに呟かれた声に胸が痛んだ。
告げられた別れはきっと彼女にとっては突然のことで、その理由を上手く伝えられなかったのは自分の言葉不足だという自覚はあった。
何となくつきあい始めた関係に常に冷静な自分を感じてた。
スケートやAのことで頭がいっぱいの状況が続く中、
「もうこれ以上好きにはなれないと思うから」と
完全に気持ちが冷めていることに気付いて切り出した別れだった。
嫌いになったわけじゃない。
それでも
もう一度…、暗に含まれた彼女の言葉に応えることはできない。

「…うん、ちゃんと話すよ。それで納得してくれるなら」

会うことを承諾したのは、気持ちを知らされないことの辛さを身を持って知ったから。
付き合ってきた以上、それを曖昧にしないのは、俺が彼女にしてあげられる、最後の優しさだと思った。

「いつ時間がとれるかわからないから、とりあえず近いうちに連絡する。俺の都合で悪いけど」
　
『ううん、いいよ。じゃ、待ってるから』

そういって切れた電話をしばらく見つめた。
結局、また彼女を傷つけることになるのかもしれない。
そう思うと会うことに少しのためらいはあるけれど、自分の気持ちに嘘はつけないから……。

またひとつ気がかりなことが出来てしまったことで、どっと疲れが押し寄せた気がした。

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