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近づく足音に目を覚まして、見渡した部屋は薄暗く、いつの間にかカーテンが閉められている。
看護師さんが閉めたのかな……。
さっきの足音は子供だったのか、「廊下は走らないでね〜」という声が聞こえてきた。
無邪気に返った「はーい」という声に思わず穏やかに口元が綻ぶ。

ゆっくりと起こした身体は少し軽くなっている気がした。
一体どのくらい寝ていたのか。
今何時だろう。時間の感覚が麻痺している。
ぼんやりする頭でそんな事を考えていると

 


「A……、起きたの?」




突然、聞こえた声に驚いて固まった。
薄暗い部屋に視線を巡らせると、開かれたカーテン。
差し込む月明かりを背にして立っていたのはゆづくんだった。



「よく寝てたね……」



穏やかに微笑むゆづくんを呆然と見つめた。


「一緒にノブくんも来たんだけど、A寝てたから。寝顔見たら安心したって、先に帰ったよ」


今、私はどんな顔をしているんだろう。
泣きそうな顔になってない……?
差し込む月明かりに晒された素顔を、ゆづくんが見つめてくる。


「もう気分悪くない?」


いつもの綺麗で優しい低い声が、静かな病室に響く。


「A?」


伺うようにもう一度名前を呼ばれても、声を出すことができないでいた。
ゆっくりと近づいてくるゆづくんに、私の肩が小さく震えた。
ゆづくんは背を向けるようにして、私のベッドに座る。

どうして、ゆづくんは帰らなかったの?
そんな声にならない疑問は静かに語りだした声に紛れた。


「具合悪いの気付かなくごめん……。あと、怒鳴ってごめん…」

 
窓の外を見つめながら呟くその横顔は、数時間前に怒鳴り合ったなんて思えないほど穏やかで、薄く照らし出されたその輪郭のラインを綺麗だと思った。
いつの間にかずいぶんと男っぽくなったよね。
笑ったり、泣いたり、怒ったり……
ゆづくんの色んな表情を傍で見てきた。
感情豊かなその全てを、愛おしいと思う。




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設定タグ:羽生結弦 , フィギュアスケート , 夢小説   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:mirin | 作成日時:2021年3月8日 0時

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